「動く委員会」への変身

 農地を巡る大きな制度改正が動きだした。農業委員の制度が変わりこの夏、大半の市町村で再出発する。遊休農地を減らし、担い手への集約や新規参入を促す狙い。「農地バンク」と呼ばれる各県の公的管理機関とも連携を強める▼農業委員と言っても一般には馴染(なじ)みが薄い。これまでは農地の売買や転用に目を光らせる「番人」役が主で、3年に1度、農家やその家族による選挙を行う公選制だった。ただ無投票が多かった▼このため法改正され、昨年春から改選を機に首長が議会の同意を得て任命する制度になった。例えば松江市の場合、農業委員は19人に半減するが、新たに農家の意向をきめ細かく把握する実働部隊となる推進委員を45人に委嘱。活動手順も用意し二人三脚で動く▼農地制度は、死ねば国有に戻った律令時代の班田収授にさかのぼる。私的所有権が認められたのは明治の地租改正からで、農林官僚だった民俗学者の柳田国男は、早くから農地の財産化を危惧。賃借権の公的管理を説いていた▼拍車を掛けたのが戦後の農地改革。自分の農地を得た農家に、地価の上昇も手伝って資産意識が浸透。さらに技術革新と基盤整備が、所有も利用も手放さない兼業化を促した▼1980年出版の『昭和農政談』を読むと、既に当時から農業委員会の見直しと、地区を把握する世話役の必要性が提起されている。「動く農業委員会」への変身は、その時代からの宿題と言えそうだ。農家の高齢化が進んでいるだけに、何とか間に合わせたい。(己)

2017年8月5日 無断転載禁止