戦争をリアルに伝える

 物資不足に伴う米の配給制や、寺院の釣り鐘にまで及んだ金属供出、防空頭巾を被っての防空ごうへの避難など、戦時下の暮らしの記憶は、どこまで今に伝わっているだろうか▼過日米子市内であった「平和のための戦争展」で、戦時中の衣服や生活用具、教科書の復刻版などの展示を見ながら、そんな考えが頭をよぎった▼会場で目を引いたのが、金属不足のため出回った代用品だ。「こんなもので頭を守れるのか」と言いたくなるような紙や竹製のヘルメット。貝殻を使ったおたまやスプーン。いかにも重そうな陶製の水筒▼これらは金属供出という戦時中の苦労や、海外からの物資の補給路を断たれた終戦間際の窮乏を知ってこそ、初めて重みが分かる。何も知らない人から見れば、奇妙さに目を取られるだけだ。くどいくらいでいい。展示品とともにその時代の説明を加えてほしいと感じた▼戦争展を企画したメンバーは、体験者の証言を映像に残す取り組みも進めている。悲しみのあまり記憶を封印したり、戦地に赴き生死の境をさまよったりした人の口はこれまで重かったが、90歳前後の高齢者が意を決して収録に応じているという▼筆者は幼いころ、フィリピンからの帰還兵だった祖父から、墓参に訪れた現地で撮った8ミリカメラの映像を見せられた。普段多くを語らない祖父が、戦友を失った地の映像を見ながら流した涙を今も鮮明に覚えている。戦争の悲惨さは、こうした経験の積み重ねで、次の世代へ自らの問題として伝わる。(示)

2017年8月8日 無断転載禁止