新長官の会見/批判浴びる異例の対応だ

 森友学園問題で財務省理財局長として国会答弁に立ち、7月初め国税庁長官に就任した佐川宣寿氏が新長官恒例の記者会見をしないという。国税庁は「諸般の事情」と説明しているが、確認できた少なくとも過去十数年間、新長官は就任から2、3週間後の会見で取り組むべき課題や抱負を語っており、何も話をしないのは異例のことだ。

 国有地が8億円余りも値引きされ、小学校用地として森友学園に売却された経緯を巡り、安倍晋三首相の昭恵夫人が小学校の名誉校長だったことから学園が不当に優遇されたと野党は追及。佐川氏は担当局長として「学園との面会や交渉の記録は廃棄した」と詳しい説明を拒み続けた。

 省内調査などの求めにも一切応じず「説明責任を果たしていない」「真相解明を阻んでいる」と批判を浴びた。そのかたくななまでの姿勢は政権寄り過ぎるのでは、と指摘されている。

 さらに8億円値引きに絡む新たな疑惑も浮上。佐川氏の答弁との食い違いが指摘されており、就任会見では追及が予想されていた。

 こうした対応は、批判されても仕方ない。首相は改造内閣発足後の記者会見で加計学園や防衛省による日報隠蔽(いんぺい)の問題とともに森友問題にも言及した。繰り返し「反省」と「謙虚」を強調して「国民の声に耳を澄ます」と述べたが、その言葉の重みが問われる。

 国有地売却を巡っては、先に大阪地検特捜部に国の補助金受給に絡む詐欺容疑で逮捕された森友学園の籠池泰典前理事長が、小学校名誉校長の昭恵夫人との関係を強調して近畿財務局や財務省本省との売買交渉を有利に運んだとされる。その過程で、夫人の存在により財務省側が忖度(そんたく)して破格の値引きにつながったという疑念が根強い。

 さらに財務省幹部が前理事長との面会で、売却前の定期借地契約について「特例」と発言したことも音声記録から明らかになった。

 こうした不透明な経緯について佐川氏は記録廃棄を盾に説明を拒否。関係法令の説明や一般論に終始して追及をかわし、職員の聞き取りなどの調査を求められても「いちいち確認することはしていない」と応じようとしなかったのは問題を大きくした。

 次官級ポストである国税庁長官への昇任は、主税局の要職や国税庁次長などをこなした佐川氏の経歴から「順当」との見方もある半面、首をかしげる人もいるだろう。

 その後、近畿財務局の担当者が学園側との交渉で、買い取り可能な金額を尋ねていた疑いも出てきた。学園側が上限として1億6千万円を示したのに対し、担当者は学園に払う国有地の土壌改良工事費1億3100万円を上回る額を求め、最終的に評価額の14%に当たる1億3400万円になったという。

 国会で佐川氏は「先方にあらかじめ価格について申し上げることはない」と述べており、食い違いがある。

 会見でこうした点を追及されることになれば、問題が再燃しかねないと佐川氏は恐れているのかもしれない。だがこのまま説明に背を向け続けるなら、国民の目はますます厳しくなるだろう。政治には透明性が最も求められることを肝に銘じてほしい。

2017年8月12日 無断転載禁止