女子ログ 次第高

 亡き祖母は語り上手な人で、幼い私にいろいろな話を聞かせてくれたが、中でもとりわけ印象に残る話がある。

 「日暮れ時に道を歩いていると、向こうから誰かがやってくる。『あれっ』と思って見上げると、そのものは背が伸びる。『えっ』と驚いてさらに見上げると、さらにそのものの背が伸びる。見上げれば見上げるほど、山のような高さになって、しまいには覆いかぶさってくるんだよ」

 だから暗くなってから一人で出歩いちゃいけないよ、というのが祖母の教えだった。

 次第高(しだいだか)という妖怪である。

 大田市の三瓶町にもちょっと似た話がある。三瓶の山道を歩いていると、平らなはずの道が突然のぼり坂になる。驚いて見上げると、もっと急なのぼり坂になり、しまいには絶壁のような坂となって、のしかかって来るのだという。次第高のバリエーションの一種だろうが、それを聞いて以来、三瓶町を訪れるたびつい周囲を見渡して、道が動きはしないかとドキドキする。

 幽霊や都市伝説などに比べ、妖怪は、怖いけれどどこかユーモラスでなじみ深い。次第高にしても「見下ろせば逆に小さくなって消えてしまう」「正体はタヌキかムジナのいたずら」などと言われている。

 妖怪は、人々が自然への畏れを抱きながらつつましく暮らしていた佳(よ)き時代を残す存在なのかもしれない。

(大田市・ぽのじ)

2017年8月16日 無断転載禁止