夢は見ないと実現しない

 ハンドバッグを主体に皮革製品の製 造、販売を展開するバルコス(倉吉市)の山本敬社長(51)が、26年前にUターンして会社を起こした時、最初にしたのは、実家に専用の電話線を引き、自分の名刺を作ることだった▼しかし電話は鳴らないし、名刺も減らない。自分には電話をくれる相手も、訪ねてくる取引先もないことに、はたと気付き、外回りを始めた。日本はもちろん欧州、アジアに製造・販売拠点を広げる今の隆盛から見れば、嘘(うそ)のような本当の話だ▼起業時から支える家族やスタッフなど、山本氏をよく知る人たちは「思考回路が高校生のまま」と口をそろえる。何も仕事がない起業時から世界に羽ばたくナンバーワン企業を目指すと本気で言っていたのだから▼ただし青くささを批判するのではない。山本氏には立派な褒め言葉だ。「夢は見ないと実現しない」と思い続け、試行錯誤の末に起業から6年後、ドイツのメーカーの国内販売代理店に。メーカーの知名度が大きな手助けとなり、夢は少しずつ形になっていく▼子どもが見る夢は、さまざまな可能性を秘めた未来だ。それがいつのころからか、夢見る大人はややもすると「夢想家」と否定的に受け取られ、現実と折り合いをつけなければならなくなる▼山本氏と違い、どこかに夢を置いてきてしまっただけに、山本氏の元で、それぞれの夢を実現しようとする働く若いスタッフがまぶしく見える。目下の目標は欧州での直営店開設。夢で終わりそうな気はしない。(示)

2017年8月28日 無断転載禁止