レッツ連歌スペシャル(要木木純)・8月31日付

(挿絵・Azu)
 あいかわらず、政治家は嘘(うそ)ばかりついていますね。そこで、

 何一つ嘘はつかぬと嘘を言い

という句を思いつきましたが、連歌としては素直過ぎて、ひねりが足らない。自分も時には嘘をついて、これまで生きてきたくせに、一方的な非難もなんだかね。政治家たちに罪悪感が全くなさそうなのは気に入らないが、逆に正直者ばかりじゃあ世の中回らないかも、とちょっとひねくれまして、

 嘘一つつかない人も恐ろしい

を前句にしました。

 やはり皆さん、政治のことが連想されるようで、

国会中継欠かさずに見る    (松江)花井 寛子

三本の矢はどこへ飛んだの   (安来)根来 正幸

現地の声はすぐにつぶされ   (出雲)石飛 富夫

総理秘書官ひと月でクビ    (益田)石川アキオ

人間味ある総理大臣      (出雲)飯塚猫の子

 皮肉がきいていますね。

オフレコは言ってくれってことヨネ

               (益田)可部 章二

記録にないし記憶にもない   (益田)石田 三章

頬をつねった所得倍増     (江津)井原 芳政

 池田首相の「所得倍増論」、「私は嘘を申しません」のことですね。私が物心がつく前なので、記憶にはありませんが、経済が上り調子の時は、政治家の言ったことが本当になることもあったわけです。今から見ると、別世界のようで、なにか空恐ろしい気持ちもします。

 嘘をつかない、つけない人は商売に向いていませんね。

試着前からLL勧める     (雲南)錦織 博子

どうせ私は太っていますよ (出雲)はなやのおきな

撮り直しするグルメ番組    (松江)田中 堂太

袈裟(けさ)脱ぎ捨ててトレーナーにする(浜田)玉田 秀子

面接官が「うちはブラック」  (松江)相見 哲雄

加齢ですねとにこりともせず  (美郷)芦矢 敦子

 冷酷なまでに真実を指摘してこそ、優秀な医者なのかもしれません。

上手に使ってまあるく生きよう (浜田)松井 鏡子

本当のことは余計に腹立ち   (益田)山藤 律子

空気が凍る瞬間が見え     (益田)安田 恒平

毎日乗っている体重計     (浜田)勝田  艶

神か仏か鬼か魔物か      (美郷)源  瞳子

信ずる者は皆救われる     (浜田)三隅  彰

スズメのお宿はだから楽しい  (出雲)三島リチエ

地震カミナリ火事に親父に   (松江)澄川 克治

舌を抜かれてしゃべれないのよ (出雲)吾郷 寿海

驕(おご)れる者は久しからずや    (松江)石塚 修三

 これらは、世間でよく言われる決まり文句とかを使っていて、平凡な発想のように見えるかもしれませんが、よくよく考えると、変な違和感があって面白いのです。リズムもいい。ご本人方はふと口をついただけなのかもしれず、過大評価かな。でも、これはこれで連歌を読む楽しみ。

 夫婦は、だましあい。嘘が必須です。

銀婚式の妻のひと言      (出雲)梅田 蓉子

誓いの言葉言えぬ花婿     (出雲)原  陽子

 その他、気に入ったもの。

ソロリソロリと忍び寄るボケ  (江津)岡本美津子

悪びれもせず笑う小悪魔    (益田)黒田ひかり

黒いベールの水晶占い     (江津)花田 美昭

指切りげんまん今も有効    (松江)山崎まるむ

 新たに投稿される方も増えてきたようなので、ここでご注意。前句にある言葉を付句では使わないでください。今回は「嘘」や「恐ろしい」を使う人が多々ありました。類義語や反対語(「本当」など)も避けられれば避けてほしい。発想の飛躍のために必要なことですのでぜひ。      

(島根大学法文学部教授)

2017年8月31日 無断転載禁止

こども新聞