永田コレクション

 江戸時代後期の代表的浮世絵師で、ヨーロッパの印象派にも影響を与えた葛飾北斎は90歳で亡くなるまで、約70年間にわたって絵筆を握り続けた旺盛な創作意欲で知られる。その画業を松江市の島根県立美術館で概観できるようになりそうだ▼同県津和野町出身の北斎研究の第一人者、永田生慈(せいじ)さん(66)=川崎市=から約1千点のコレクションが寄贈されることになった。小学生の頃から収集してきた浮世絵などで、900点以上が北斎の作品という▼「画狂人」など、号を生涯に30回も変えた北斎が「春朗」と名乗っていた20~30代の頃や最晩年に描いた肉筆画など貴重な作品を含む。風景版画の代表作「冨嶽(ふがく)三十六景」シリーズももちろんある▼寄贈先が当地に決まった背景には、実業家で衆院議員も務めた桑原羊次郎と、桑原の影響を受けた実業家の新庄二郎という松江出身の2人の浮世絵収集家の存在がある。大先輩を輩出した松江の地に収蔵されることは栄誉だと永田さんはコメント。松江藩、津和野藩の時代から育まれてきた島根の文化を感じる▼県立美術館には既に新庄コレクションとして約500点の浮世絵があり、今年の正月にも展覧会が開催されたばかり。世界にファンがいる浮世絵の充実は、外国人観光客を呼び込むインバウンド対策を進める上でも大きな力になる▼今後は赤富士として有名な「冨嶽三十六景 凱風(がいふう)快晴」の新庄版と永田版の共演も楽しめそうだ。2019年3月ごろとされる受贈記念の企画展が待ち遠しい。(輔)

2017年9月3日 無断転載禁止