邑南で「三江線思い出企画展」 貴重な資料展示

陳情書の署名を見ながら、三江線開通への沿線住民の熱意を振り返る加藤芳蔵さん
 2018年3月末で廃止となるJR三江線にまつわる貴重な資料を集めた「三江線思い出企画展」が、島根県邑南町下口羽の口羽公民館で開かれており、1950年代に浮上した江の川ダム建設計画への反対陳情書が、沿線住民の全線開通に向けた熱い思いを伝えている。「開通は父祖三代にわたる悲願」などと記され、実際に陳情書に名を連ねた来場者が、感慨深そうに当時を振り返っている。

 江の川ダム建設計画は50年代に持ち上がり、実現されると三江線予定区間が水没し、山陰と山陽が結ばれなくなる可能性が生じた。早期開通を願う島根、広島両県の沿線村長らは、56年2月1日付で反対陳情書を作成。「三江線開通はわれら父祖三代にわたる悲願であり、沿線住民は一日も早く全通を熱望している」として、27人の署名が添えられている。

 邑南町下口羽の加藤芳蔵さん(91)は、61年前に提出された陳情書に名を連ねた。当時、口羽村青年団長を務め、ダム反対の運動に参加した。「むしろ旗を掲げて島根県知事らに要望したのを覚えている」と振り返る。同企画展で陳情書に再会し、「開通を望む当時の住民の熱意はすごかった」と懐かしんだ。

 戦争やダム建設計画の浮上など、いくつもの困難に遭遇しながら、沿線住民の期待を受けて全線開通した三江線。来春に迫った廃線に、加藤さんは「時代が変わり、仕方がない」とさみしそうにつぶやいた。

 反対陳情書は広島県立文書館(広島市)の所有。会場には他にも、31年の山陰新聞(現山陰中央新報)の記事、住民が撮影した写真など鉄路の軌跡を伝える資料が並ぶ。

 企画展は28日までで入場無料。

2017年9月12日 無断転載禁止