映画プロデューサーのささやかな日常(51)

夏の終わりを告げる「高円寺阿波おどり」(東京都杉並区)
キャスティングリスト

意中の俳優に思い届くか

 その原作との出合いは、2年半前。10年来の付き合いの監督から教えてもらったものでした。「映画にしたい」とほれ込んで以降、まず監督と方向性をじっくり話し合い、さらにベテラン脚本家に参加していただいて…3人で話し合った時間は延べ何百時間になるでしょうか。そんな打ち合わせの日々を経て、ついにすべてのベースとなる脚本が完成しました。

 いったん決定した脚本は「初稿」と呼ばれ、原作者や俳優、映画の出資者に渡します。今後このプロジェクトに参加していただけそうな方々の意見も取り入れ、さらにブラッシュアップされていくことになります。

 初稿が完成したところでプロデューサーがやるべきもう一つの大きな作業は、キャスティングです。今回は原作を読み終えた瞬間から、監督も僕も同じ人を主役に思い描いていたので、さっそくその俳優さんにオファーしました。俳優事務所のマネージャーさんに脚本を渡し、興味を持ってもらえれば本人と相談していただけます。今回は1カ月ほど首を長くして待ちましたが、内諾を得ることができました! まずこれが、映画製作においてとても大きな一歩なのです!!

 ところが、主演はもちろん大スターなのでとても忙しく、彼の空いているスケジュールで撮影しなければならないことに。まあ、これはいつものことですが(笑)。そのような流れで撮影日程がおおよそ決まれば、全体スケジュールを組むことになります。主演は自分たちが望んだ人に決まったので万々歳なのですが、次は脇役の布陣に頭を悩ませることになります。

 脇役キャスティングの方法はプロデューサーによってさまざまだと思いますが、僕の場合は、まず一つの役に対し、最低5人以上の候補を優先順にリスト化します。リストを作ることで、それらの役の俳優が並んだ時の映画の全体像が見えてきます。一人一人順番にオファーしながら、そのリストの順番を入れ替えたり、新たな候補はいないのか等々、配役のキャスティングがすべて終わるまでずっと試行錯誤し続けます。

 人気俳優には、常に膨大な数のさまざまな映画やドラマの脚本がオファーされ、常にどの仕事を選ぶかを精査しています。僕らが作った脚本よりも「面白い、やりたい」と思える脚本があったら、そちらを選ぶということです。

 特に人気脇役の方々は忙しく、連ドラを撮影しながら映画の撮影にも参加したりするので、運がなければ他の作品を優先されてしまいます。オファーのタイミングがうまくハマれば出演OKとなるし、そうでなければ泣く泣くあきらめざるを得ない人も出てきます。つまり常にこちらの願いどおりの俳優とお仕事できるとは限らないのが現実なのです…。

 そんなわけで、脚本はまず俳優へのラブレターでもあると考えています。果たして意中の人にこの思いが届くのか? 毎日ドキドキの日々がはじまりました。

(松竹映像本部・映画プロデューサー、米子市出身、写真も)

2017年9月15日 無断転載禁止