活力をもたらす霊鳥

 出雲は古代から白鳥と縁が深い。日本書紀は、大人になっても言葉が話せない天皇の御子(みこ)が、出雲で捕らえた白鳥を得ることで話せるようになったと記す▼逸話に通じるような伝承が、出雲市斐川町求院(ぐい)の求院八幡宮に伝わっており興味深い。地名は白鳥を示す古名の「白鵠(くぐい)」が変じ、捕らえた場所は周辺にあった池のほとりで、八幡宮内にある鵠(くぐい)神社は御子を祭神に祭る。白鳥は人の霊魂を運ぶ霊鳥とされた▼視野を広げると、宍道湖・中海を中心とする斐伊川水系には今も多くの水鳥がやって来る。冬の使者・白鳥は毎年1千羽以上が飛来し、ガンやカモは4万羽を超す。西日本有数の楽園だ▼特に、白鳥やツル類など五つの大型水鳥が生息できる環境は国内でも唯一。国土交通省出雲河川事務所は優れた特徴を生かし全国7地区の一つとして、地域の魅力と活力づくりを狙い生態系ネットワーク形成事業に取り組む▼中でも最近、多くが飛来し生息する雲南市のコウノトリに注目し、生息行動調査に乗り出した。ねぐらはどこか。雲南に来る数が増えた理由は何か。それが分かれば同省が兵庫県豊岡市の円山川で実践したように、川の周辺に湿地を造り、生息環境の拡大と洪水対策を行うこともできる▼豊岡市では、無農薬の「コウノトリ育む農法」を拡大し、米のブランド化や水田で多くの生き物が増える環境づくりを進めている。雲南市も国や島根県と連携し、産業や観光、教育などに幅広く活用し、地域を元気づける霊鳥として生かしたい。(道)

2017年9月18日 無断転載禁止