充実と安定の差

 「社会保障の充実」と「社会保障の安定化」は似て非なるものである。充実は国民にとって現状より給付が増え、サービスも改善する期待を抱かせる。一方、安定化は現状維持か、少なくとも切り下げないとのメッセージ▼安倍晋三首相が来週の臨時国会冒頭にも衆院を解散する意向を固めたという。任期を1年余残し、来月には総選挙となりそうだ。「大義なき電撃解散」と言われる中で過去2回先送りした消費税増税が争点として浮上している▼仏の顔も三度。2019年10月に延ばした増税は、よほどのことがない限り避けられない。ただし増税分の使い道は変更したい、と安倍首相は考えているようだ▼10%への増税分のうち2割を社会保障の充実に、8割を安定化に使うとしていた既定路線を見直し、増税のメリットが感じられる充実の方に優先的に振り向ける。選挙向けのにわか修正のにおいがしないでもないが、はしごを外される安定化の中身は借金返済が中心で、借金を減らすことで社会保障を安定させたいとの狙いはお預け▼教育無償化の議論を加速させるなど最近の安倍政権は、人への投資を強めようとしている。富を分かち合う旧民主党の所得再分配政策を引き継ぐ民進党のお株を奪うようだが、社会保障の受益と負担をどう考えるか、各政党が政策を競い国民に選択を問う▼選挙まで時間は少ないが、不断に政策を磨く努力をどこまで積み重ねてきたか。風頼みや空気を読む政治の「実力」があぶり出されるかもしれない。(前)

2017年9月20日 無断転載禁止