受け継がれた世界平和の願い

 松江市出身で東京芸大大学院教授の宮廻正明氏(66)らの研究チームが日本が誇る最新技術を使った文化財の複製、通称「クローン文化財」の製作、公開に取り組んでいる。このプロジェクト、いずれノーベル平和賞級の評価を得るのでは、と思える▼最新鋭のデジタル撮影や科学分析と、長年培われた文化財修復のノウハウを融合させ、実物と同じ素材、質感で完全に再現。劣化の問題から公開が限られる文化財を世界各地で展示できる▼さらに、宮廻教授が掲げるのは「超越」の概念だ。資料を基に破損部分を再現することで「現物を超えたオリジナルの姿」がよみがえるからだ。手を触れることもでき、教育分野の活用にも可能性が広がる▼そこには師匠であり日本画の大家、平山郁夫氏の思想が継承された。シルクロードを巡り、人々との交流を通して作品を残した平山氏は、世界平和を願いながら文化遺産の保護・継承活動の先頭に立った▼23日に東京芸大で開幕する「素心伝心 クローン文化財 失われた刻の再生」では破壊された中東の仏教壁画など、クローン文化財70点が並ぶ。来夏は島根県立美術館に巡回。平山氏と同じくイスラム圏を訪ねて、貴重な文化財の撮影を続けた並河萬里氏の膨大な写真資料(島根県保管)も、復元に活用できるそうだ▼宮廻氏の念願は「文化外交」の実現。芸術は思想、宗教を飛び越える。平山、並河という2人の先人の遺志を受け継ぎ、日本が文化の力で世界平和の橋渡し役を担ってほしい。(築)

2017年9月22日 無断転載禁止