隣人

 「絶対治る。もし医者にそう言われても不安は消えん」。雲南市木次町のパーキンソン病患者で、市内で難病サロンを運営する黒田一夫さん(64)が言った。それほど、難病患者は強い不安と闘っていると思い知った▼京都大の研究者が人の人工多能性幹細胞(iPS細胞)から神経の元になる細胞を作り、パーキンソン病のサルに移植する治療の有効性を確認した。2年間、腫瘍などの異常も起きなかったという▼先端医療は希望の光。そう思うのは早計だ。「2年じゃだめ。10年、20年と生きられないと」。黒田さんと親しい同病患者の反応も鈍いらしい▼黒田さんは1993年に39歳でパーキンソン病と診断され2003年、脳深部に電気で刺激を与えて症状を改善する手術を受けた。自分の事は自分でできるほど手足は動く。ただ、自律神経の機能が低下し昨年1月、食べ物をうまくのみ込めず誤嚥性(ごえんせい)肺炎で入院した▼こうした同病患者の苦しみは周囲には分かりにくい。治療と仕事の両立も難題だ。島根県内の難病患者数(16年度末現在、306疾患)は6526人。県民のほぼ100人に1人。高齢化もありパーキンソン病は1051人と2年間で56人増えた。患者の言葉にもっと耳を傾けたい▼黒田さんたちは来月24日、中四国地方の患者団体の研修交流会を出雲市今市町のパルメイト出雲で開く。一般参加も可能だ。先端医療の完成度の向上となると素人には手も足も出ないが「隣人」として患者の思いに触れ、手を携えることはできる。(杉)

2017年9月24日 無断転載禁止