世事抄録 Jアラートの裏表

 案の定、戦争プロパガンダが一斉に始まった。それに乗った形で衆院解散を仕掛け、争点に自衛隊認知の9条加憲を狙う自民党。森友・加計疑惑を解明すべき国会を逃げ切りのジャンプ台に逆用する作戦だが、着地がうまくいくとは限らない。

 それにしても芝居がかっている。「北朝鮮からミサイルが発射された模様です!」とJアラートが鳴り響き、避難を指示された地下街などない田舎の住民までが耳をふさぎ、頭を抱え込む。その姿が日光東照宮の「三猿」に見えたのは私だけではないだろう。

 安倍首相は「わが国にミサイルを…」とうろたえたが、軌道は国際宇宙ステーションのはるか上で領空ではない。テレビ画面に災害時の特報帯が現れ、堂々巡りの解説コメントが終わるころ、催眠術の実演を見たような気持ちになった。

 恐怖感に惑わず歴史を読み返してみよう。3年続いた朝鮮戦争は1953年に停戦となり、停戦協定に「全ての外国軍は朝鮮半島から撤収」と明記されたのに、米軍は現在も韓国に駐留する。平和協定は実現せず、70年代からは平壌(ピョンヤン)への核攻撃を前提に韓米合同軍事演習が繰り返されてきた。

 歴史的事実は拍子抜けするほど明快。金王朝の独裁や拉致を断罪するのはたやすいが、短絡的に数千万人の相手国民を抹殺する発想に立ったとき、われわれ自身が鬼と化す。武力依存が事を誤らせる。

(松江市・風来)

2017年9月28日 無断転載禁止