レッツ連歌(下房桃菴)・9月28日付

(挿絵・Azu)
◎授業はやめて子ども駆り出し

コウノトリ母亡き里に放たれて (雲南)原  治美

◎お客さんもう終わりましたよ

魂胆を見抜いたママの知らぬ顔 (浜田)勝田  艶

◎そそっかしいがすごくひたむき

受け継いだDNAに胸を張り  (松江)河本 幹子

◎見回りコース変える青パト

スタンドに今度来た娘(こ)のかたえくぼ

               (益田)吉川 洋子

◎一つ足らない五目弁当

発車した後で気がつくバス旅行 (益田)石川アキオ

逃げてゆく猿見かけたと口揃(そろ)え (飯南)塩田美代子

コンビニへ観光バスが列をなし (出雲)石飛 富夫

◎世界遺産にやっと登録

駐車場たっぷり取れる過疎の町 (松江)川津  蛙

◎オハジキできるほど薬飲み

菓子箱を替えて仕分けのマス増やし

            (兵庫・明石)折田 小枝

◎見て見ぬフリをしてる気苦労

おばあちゃんさっきも顔を洗ってた

               (出雲)野村たまえ

◎十年ぶりに妻の手をとる

還暦でやっと叶(かな)った二人旅   (益田)竹内 良子

ちょっとした段差に転ぶようになり

               (出雲)栗田  枝

立候補させてくださいもう一度 (邑南)清水 律子

突然のJアラートに腰が抜け  (益田)石川アキオ

◎言った言わぬで下がる支持率

官邸は北のおかげで息をつき  (松江)安東 和実

◎これが最後と思い十年

蔵一つ建つほど買った宝くじ  (松江)水野貴美子

◎手足の動きぎこちないけど

ミスターは今もバットを振り続け(江津)花田 美昭

旅先で見よう見まねの盆踊り  (出雲)原  陽子

戦争を語る舅(しゅうと)の目に涙     (松江)勝田 深雪

◎手を振る人の複雑な顔

勇ましく勝ってくるぞと故郷(くに)を出て

               (松江)三島 啓克

◎病院行きのバス便が増え

新顔は一言仁義切って乗り   (安来)足立 純枝

乗り継ぎをやっと見つけた蛭子さん

               (益田)可部 章二

◎市長選挙は来年の春

はやばやと刷った名刺は五万枚 (松江)野津 重夫

◎覚えておけばなにか役立つ

知っていることはなんでも話す叔母

               (松江)川津  蛙

◎ぐっと呑(の)み干す朝の冷酒

返納を迫る息子の長電話    (益田)石田 三章

居残りと呼ばれ覚悟の布団部屋 (松江)岩田 正之

◎ハイジはかける青い高原

こらこらと目じりが下がるおじいさん

               (出雲)飯塚猫の子

◎母の残した和服をリフォーム

花束を渡す大役引き受けて   (松江)高木 酔子

           ◇

 猫の子さんの「こらこらと―目じりが下がる」は、ごく単純に考えれば、ありえないこと。でも、実際はそうじゃない。読者に一旦(いったん)「ん?」と思わせて、しかるのち「なるほど」と納得させる、という手法。「ん?」と思わせた分だけ、強いインパクトを与えることができます。

 このように、一見矛盾することばをあえて並べる表現法を「撞着(どうちゃく)法」と申します。「善人なほもて往生を遂ぐ」なんてのはその典型。すごいインパクトですよね。

           ◇

 次はまた、今日の入選句に短句(七七)をお願いいたします。

              (島根大学名誉教授)

2017年9月28日 無断転載禁止

こども新聞