柏崎刈羽原発の再稼働/原発ごとに慎重に判断を

 東京電力柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)の再稼働に向けた審査で、原子力規制委員会が合格証に当たる審査書案を了承した。東日本大震災で過酷事故を起こした福島第1原発と同型の沸騰水型原子炉で、東京電力としては初の審査了承となった。

 全国の原発の中で沸騰水型の再稼働手続きは柏崎刈羽が先行していた。同じく沸騰水型の中国電力島根原発2号機(松江市鹿島町)の審査も進んでいる。原子力規制委の発足から5年、原発審査はあらたな段階に入ることになるが、くれぐれも厳格な審査を前提としなければならない。

 規制委は、これまでに26基の原発からの新規制基準に基づく安全審査の申請を受け、このうち12基が合格。その後の手続きを経て、5基が再稼働した。

 柏崎刈羽原発の審査過程で大きな議論になったのは、東電に原発を運転する資格があるかどうかだったが、手探りでの審査が続いた。規制委の田中俊一前委員長は7月に「第1原発廃炉に主体的に取り組む覚悟と実績を示せない事業者に再稼働の資格はない」と述べ、東電に厳しい姿勢を見せていた。

 だが、田中氏は9月6日の会合で「第1原発事故の経験はプラスになる」と東電を評価、一転して、審査をパスする流れができた。18日に退任した田中氏が、最後に再稼働に道をつけた形だ。

 委員会は、東電がこれまでに示した安全確保についての「覚悟と決意」を、原発の保安規定に明記させることなどを条件に「適格性がある」と判断した。

 ただ、東電の経営は、賠償や事故炉対策、大量の廃棄物処理などのコストが急増し、国や他の電力会社に頼らねばならない状況がある。また、電力市場の自由化の中や、再生可能エネルギーの普及、省エネが進む中、電力需給の観点からも経営資源をどこに投入するか判断が待たれる。

 「柏崎刈羽原発の再稼働は東電による円滑な賠償や事故対策推進に欠かせない」というのが経産省などの主張だが、原発再稼働が東電の経営状況を大きく好転させるかどうかも含めて、国は厳しい目で東電の原発事業を見ていかなければならないだろう。

 安倍晋三首相は「規制委の審査で安全性が確認された原発の再稼働を進める」と繰り返し述べており、規制委の判断をお墨付きに経済産業省などが再稼働に向けた働きかけを強めるとみられる。

 一方、島根原発2号機に対して規制委は、耐震設計上考慮するべき震源断層「宍道断層」の長さは、同社が主張する約39キロが妥当と判断。断層の評価が固まったことで、次回以降、耐震設計の目安となる「基準地震動」の確定に向けた議論に入る。

 沸騰水型炉に設置が義務付けられたフィルター付きベントなどの設備審査は、柏崎刈羽のケースを応用すれば相当のスピードアップにつながる可能性もあるといわれるが、あくまで個々の原発ごとの環境、条件に添って慎重に判断しなければならない。

 電力事業者の中には、長期にわたる稼働停止で原発の稼働状況を実際に知らない、若い職員も増えた。原発の発電業務に携わる技術、安全へのモチベーション維持なども大きな課題となっている。

2017年10月5日 無断転載禁止