弥山で十分

 国立公園・大山で紅葉の色づきが早いのは東壁だ。10月の終わりに見頃を迎える南壁より先に、山肌が鮮やかな衣をまとい始める季節になった。ただし、少なくとも森の峠道を1時間以上歩かないと、観賞スポットの地獄谷にはたどり着けない▼大山で最も高いのは「剣ケ峰」と呼ばれる頂で標高は1729メートル。しかし、崩落が激しく、危険な縦走路の途中にある。行政や警察は「通行禁止」を呼び掛け、足を踏み入れることはできない▼その代わりとなるのが頂上小屋のある標高1709メートルの「弥山」。山頂付近の斜面は多くのボランティアによる植栽で草原が復活し、晴れた日には雄大な360度のパノラマが広がる。弥山で十分。コンクリート製の頂上碑に腰を下ろして眺めを楽しむだけで達成感は味わえる▼その頂上碑に危機が迫っている。背後の斜面が大きく崩落。数年後には碑に近づくのも危険になるという。10年以上前から指摘はされていたが、「開山1300年祭」の前年になってようやく行政が腰を上げ、碑の移設を検討し始めた▼大山は全域で岩がもろいため、崩落で通行困難な登山ルートが点在する。宇多田ヒカルさんが登場するサントリーのCMロケ地となった烏ケ山(1448メートル)も、去年の鳥取中部地震で頂上近くのルートが崩れ落ち、現在通行不能だ▼開山1300年祭のPRは重要だが、登山の安全対策は十分だろうか。大山は厳しい山である。秋の登山シーズンになったが、人がどっと押し寄せてからでは遅い。(示)

2017年10月8日 無断転載禁止