紙上講演 青山学院大教授 会田 弘継氏

青山学院大教授 会田弘継氏
アメリカはどこへ向かう~日米関係の行方

日本に保護主義の矛先

 山陰中央新報社の石見政経懇話会、石西政経懇話会の定例会が10、11の両日、浜田市と益田市であり、青山学院大教授の会田弘継氏(65)が「アメリカはどこへ向かう~日米関係の行方」と題して講演した。トランプ政権誕生をもたらした米国の経済的背景や、トランプ大統領が推し進める保護主義的な通商政策の影響を説明した。要旨は次の通り。

 トランプ政権は、白人を中心とした下層中産階級によるエリート階級への反乱の結果として誕生した。大統領選ではクリントン氏が、高所得者が多い西海岸などで支持を集めた一方、トランプ氏は低所得者が多く、ポピュリズム(大衆迎合主義)が台頭する地域を軒並み制覇。米国の格差社会の現状を表した。

 米国では、低学歴者の貧困化をはじめ、上位層の富の占有による階層の固定化や中産階級の没落が進む。経済格差の進行は、年々漸増する米国の白人の死亡率や自殺率にも表れている。特に、中産階級はグローバル化の恩恵を受けられず、苦しめられている。

 そうした社会情勢の打破を望む有権者の期待を受けて当選したトランプ氏は、国民の雇用確保を念頭に、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉など米国第一の通商政策を講じる。矛先は日本にも向くだろう。自動車各社がメキシコに生産工場を持ち、北米に多数輸出しているからだ。

 米国にはびこる格差の現状は日本も看過できない。東京圏の有権者を対象に行った世論調査では、「米大統領選でどちらの候補に投票するか」との問いに、クリントン氏を選んだのが63%とトランプ氏を大きく上回ったが、15~29歳の男性ではきっ抗していた。

 これは、若年男性が将来に希望を見いだせない社会情勢を示しており、日本が米国と同じ課題を抱えていることが分かる。

2017年10月12日 無断転載禁止