衆院選・社会保障と山陰/地方が損をしないように

 今回の解散理由の一つになった少子高齢化は、山陰両県にとって人口減少を伴う重い課題だ。その処方箋となる社会保障や教育施策では、与党の利を生かし自民・公明両党の公約が先行する。急な解散になり、再編に追われた野党側は準備不足が否めない。

 しかし有権者には身近で、2019年10月に予定される消費税率引き上げが絡む問題だ。論戦を通じて一致できるところから方向性を明確にし、持続可能で誰もが安心できる制度設計につなげてもらいたい。

 与党は予定通り消費税を8%から10%に引き上げ、増収分の使途を変更して、うち2兆円程度を幼児・高等教育の無償化、子育て支援に活用。「全世代型社会保障」に転換するとする。

 これに対し希望の党は「景気への影響」を理由に、日本維新の会は「身を切る改革が先」と増税の凍結を主張。立憲民主、共産、社民の3党は増税に反対する。消費税増税に代わる財源としては、希望が「大企業の内部留保への課税を検討する」とするが、詳細は示されていない。

 与党は、20年度までに3~5歳児の幼稚園・保育所を無償化し、待機児童解消のため32万人の受け皿の整備を促進。所得の低い家庭に限り高等教育を無償化するとする。

 ただ政策のパッケージを示すのは選挙後の年内が目途。使途を変更することで、これまで「手厚くなっていた」とされる高齢者向けに影響が出ないのか気になるところだ。

 特に18年度は病院や介護事業所に支払う診療報酬と介護報酬を同時に改定する6年に1度の年。団塊の世代が75歳以上になる25年以降、医療や介護の費用が増えていくことは確実だ。

 消費税10%のままで、高齢者にシワ寄せが出ない全世代型がいつまで可能なのか。せめて30年程度先まで見通した行程表を示し、負担増が必要なら正直に語るべきだ。それが安心につながるだろう。

 12年の3党合意を5年で見直し、20年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化する目標も断念した。こうした姿勢では、課題もツケも先送りしたバラマキと批判されかねない。

 もう一つ、論議してほしいのは都会と地方などで新たな差が生じかねない点だ。全国一律なら、子どもがいれば、その数に応じた恩恵は個人レベルでは同じだが、地域で見ると、総額は人数や世帯数の多い都会ほど大きくなり、波及効果も違ってくる。

 例えば、大学の数が多い東京の大学生数は島根の100倍近い。将来、無償化に舵(かじ)を切れば、自宅から通える東京は、より進学しやすくなり、進学後の負担分を事前に学習塾などにも回せるだろう。

 地方でも、都会への進学負担が軽減されれば、進学を機会にした若者の流出が増えると指摘する声もある。

 また、保育園・幼稚園の無償化や待機児童対策で、都会の子育て環境が改善されれば、地方に住み替える動機が薄くなったり、マンパワーが都会に吸収されたりする心配もある。

 高齢県は、年金受給者の比率が高い。高齢者向けの施策次第では、地域への影響も考えられる。制度設計では、結果的に地方が損をしない仕組みを考えてもらいたい。

2017年10月13日 無断転載禁止