(99)酒谷のオロチカツラ(美郷)

県指定の天然記念物「酒谷のオロチカツラ」=2016年4月2日撮影(加島美知さん提供)
花咲く樹冠は“鈩の炎”

 美郷町酒谷に、日本神話に登場する八岐大蛇(やまたのおろち)のような形をした珍しいカツラの木がある。「酒谷のオロチカツラ」といわれる推定樹齢500年の大樹。春の花時にはわずか数日ほどだが、樹冠全体が赤紫色の花で染まる。神々しく、生命力を感じさせる姿が人々を魅了してやまない。

 カツラの木があるのは、県道166号線近くを流れる沢谷川の土手下。そばに立つ案内板によると、幹回り9・85メートル、高さ19・2メートル。8本の支幹を株立ちさせ、15メートルの根を下流に向かって横に伸ばす。八つの頭と尻尾を持つ八岐大蛇の趣を醸し出しているとして2013年4月、県指定の天然記念物に登録された。

 鈩(たたら)の神様「金屋子神」の飛来木ともいわれ、この地の鈩の盛衰を見続けてきたとされる。春の花時には樹冠全体が赤紫色に染まり、朝日を浴びた姿はまさに、鈩の炎のようだ。数日後には新芽が出始め、黄色に変わるという。ハート形の葉をつけることでも知られ、薄緑色から、夏にかけて濃い緑へと色を変える。秋は、落ち葉が甘い香りを漂わせる。

 近くに住む加島兼雄さん(80)は「子どもの頃からずっと見て育った。年間を通して色を変えていく不思議な木。花が咲く頃には、町外から見に来る人も多い」と話す。

 こうした状況を受け、地元の住民組織「酒栄会」や連合自治会が散策道を整備したり、草刈りをしたりするなど保護活動に取り組んでいる。樹木医も定期的に様子を見ているという。

「今年も花が咲いたかな、と楽しみにしている」と加島さん。里山の人々が守り育む神秘の樹である。

2017年10月19日 無断転載禁止