女子ログ 心の浅さ

 江津の今井美術館で「星野道夫写真展」を見た。著名な動物写真家である彼の作品は今までにメディアなどで目にしたことがあるが、実物は初めてだ。1996年、ヒグマに襲われ43歳の若さで亡くなるまで、アラスカを拠点に、どのようなまなざしで動物や自然を見つめてきたのかに興味があった。

 素晴らしい写真もさることながら、添えられた言葉にしばしば立ち止まった。その中で心にずしんと響いた文がある。

 「人間の気持ちとは可笑(おか)しいものですね。どうしようもなく些細(ささい)な日常に左右されている一方で、風の感触や初夏の気配で、こんなにも豊かになれるのですから。人の心は、深くて、そして不思議なほど浅いのだと思います。きっと、その浅さで、人は生きてゆけるのでしょう」

 普段「深く考える」とか「意味の深い言葉」とか、どちらかというと心や思考が「深い」ことに良いイメージを持っていたので、「心の浅さ」で人が生きていけるという感覚は、とても新鮮だった。そして、動物たちの自然な表情とともに、驚くほどに優しく、すんなりと心に染みわたった。

 家族の病気などで悩みの尽きない今の自分に対し、大丈夫だよと静かに応援してくれたようにも感じた。

 彼の言葉がつまった文庫本は、この秋の愛読書である。

(浜田市・Faultier)

2017年10月20日 無断転載禁止