穴の開いたバケツ

 「穴だらけのバケツに水をくんでも、もれていくだけ」。テニスを題材にした少女漫画の傑作「エースをねらえ!」に出てくる言葉を時折、思い出す。問題の根本を解決しないまま努力しても実らないことの例え。仕事や人間関係などで思い当たる節がある▼日本の社会保障制度も「穴の開いたバケツ」か。高齢化が進み医療や年金、介護のサービス量と費用は増加の一途だが、財源は人口減少などが響き、税収が不足する。穴を埋めるため、保険料引き上げや借金(国債発行)を重ねるやり口は長く持つまい▼介護保険は深刻だ。保険料は平均で月5千円を超え、2000年の開始時の2倍に。一方で福祉施設の入所条件厳格化などサービスと経費の切り捨てが進む▼劣化した品を高く売る。そんな社会保障制度に開いたもう一つの穴は国民の不信だ。費用負担に見合うサービスを受けられるか。不透明だから消費税増税に身構える。教育に財源を回そうが増税を見送ろうが、今ある穴は埋まるまい。改革の道筋を示し信用を取り戻すのが先決だろう▼きょうは衆院選の投票日だ。前回14年の全国投票率は戦後最低の52%。数字は国民の信用低下という、政治に開いた穴の大きさを物語る▼「エースをねらえ!」には「ここまでだと思ったとき、もう一歩粘れ」という言葉もある。社会の歪(ひず)みを政治のせいにするのはたやすい。穴をふさぐことを諦めた付けは、いずれ払わされる。各党・候補者の主張を見極め、主権者として責任ある1票を投じたい。(杉)

2017年10月22日 無断転載禁止