地方創生とインバウンド/地域に喜ばれる振興を

山陰インバウンド機構代表理事 福井 善朗

 訪日外国人旅行者数が昨年より1カ月早く2千万人を超えた。この勢いでいくと、今年は過去最高だった昨年実績2千4百万人を上回るのは間違いなさそうだ。国が五輪イヤーの2020年に掲げる4千万人の目標もぐっと現実味を帯びてくる。

 新聞やインターネットに「インバウンド」の見出しが頻繁に登場するようになったのはここ数年だ。来訪時の査証(ビザ)の撤廃や緩和、格安航空会社(LCC)の路線の拡充など、国の戦略が功を奏した。

 また、東南アジア諸国のGDPが飛躍的に伸長したことでニッポンへの海外旅行ブームが起こった。そんな追い風の中でインバウンドによる「経済効果」がにわかに注目を浴びるようになった。

 「爆買いに続くインバウンド関連銘柄を見直す」「ドラッグストアのインバウンド消費が上昇」「インバウンド向け外国語接客アプリを開発」などの経済記事が並ぶ。インバウンドによる経済効果を狙ったさまざまな取り組みが行われている。国は観光客数の増加と並行して、インバウンドによる観光消費額の向上を目標にしている。20年の目標は8兆円だ(昨年は3・7兆円)。

 国全体のインバウンド戦略は着実に進んでいると思う。一方で「地方」においてはこれからだろう。山陰インバウンド機構は、鳥取県と島根県への外国人観光客誘致と観光による両県経済の活性化を目的に、昨年4月に設立された。観光によるまちづくりを推進する日本版DMO(デスティネーション・マネジメント・オーガナイゼーション)の候補法人として国の認定を受けている。

 インバウンドの本来の意味は広義だ。「経済活性化」と「ソフトパワーの強化」の二つの視点がある。また、「経済活性化」も、単なる観光消費による経済効果だけではなく、地域産品のブランド力を強化することで輸出競争力の向上につなげていくことができる。

 いまや世界ブランドに発展した「熊野の筆」のように、日本各地で脈々と培われてきた伝統工芸品が海外の「目利き」に評価されたことでいきなり<JAPANBRAND>へと変わっていくこともある。

 そして、経済効果と並行して注目すべきはインバウンドがもたらす「ソフトパワー」だ。国と国の付き合いは政治や貿易の世界ばかりではない、根っこのところは人と人の関係に立ち戻ってくる、組織と組織の障壁やトラブルも人のつながりが解決できる場合がある。

 地方の観光振興には「三方良し」が求められる。ここに言う三方とは「観光客」「観光事業者」「地域(住民)」を指す。国内外の観光客に喜んでもらうこと、旅館・ホテルなどの事業者が利益を得ることはもちろん大切だが、地域に喜ばれることが継続していく為には何よりも重要だ。

 インバウンドの潜在的な「ソフトパワー」を活(い)かしながら、地域に喜ばれる観光振興を行うこと。地方のDMOにはその辺りのバランスも求められている。

…………………………

 ふくい・よしろう 長崎市出身。1980年に近畿日本ツーリスト入社し、国内旅行部などを経て地域振興部を設立。着地型観光の「ニューツーリズム人材養成講座」を各地で運営した。2007年、角川マーケティングとの共同出資で観光開発会社ティー・ゲートの立ち上げに参加。13年に神奈川県観光担当課長に就き、16年4月から現職。神戸夙川学院大客員教授。

2017年11月13日 無断転載禁止