逆走問題編(1)高い重大事故リスク 突然、目前に車 回避困難

両県認知件数 年々増加

 山陰両県をはじめ、全国の高速道路で車の逆走が後を絶たない。重大事故に直結するため、国土交通省は過失や故意、認知症を主因と分析し、2020年までに逆走による事故ゼロを目指す目標を掲げた。注意を促す案内標識や路面表示の増設に加え、メーカーにカーナビを活用した警告の仕組みといった技術開発を呼び掛ける。山陰両県で起きている事故の実態や課題を検証し、今後の対策を探る。


JAFが公開している逆走の実験映像。高速道路では逆走車(左)に気付いてから回避まで一瞬しかない
 16年2月、浜田市西村町の山陰自動車道・浜田三隅道路の西村インターチェンジ(IC)。同市内の60代男性の軽トラックが、高速道と一般道をつなぐ連結路(ランプ)出口から進入して逆走し、対向した長野県松本市の20代男性の軽自動車と衝突した。トラックの男性は「誤って入ってしまった」と振り返った。幸い2人は軽傷で済んだ。

 中国地方では16年7月、岡山県倉敷市の山陽自動車道で、追い越し車線を逆走していた乗用車と大型トラックが正面衝突し、乗用車の60代女性が死亡。正面衝突の直前にも、逆走車を避けようとした別のトラックに後続の大型トラックが追突する事故が起きた。


原因の把握難しい

 国交省と高速道路会社によると、11~14年に全国で発覚した逆走事案は年間200件前後で推移。おおむね2日に1回の頻度で発生している。15年は259件、16年は249件となり、このうち2割が事故だった。

 島根、鳥取両県警によると、島根の逆走の認知(通報)件数は13、14年にそれぞれ6件。中国横断自動車道尾道松江線が全通した15年に20件に急増し、16年はさらに1件増えた。17年も10月末で既に20件に達している。事故は13~17年に計3件起き、人身事故1件、物損事故2件だった。

 鳥取は13年こそ0件だったが、14年5件、15年8件、16年6件と続き、17年は10月末で5件に上る。事故は13~17年の間に、ICのランプ逆走による物損2件となっている。

 ただ、通報を受けた警察が実際に逆走車を発見できたのは、島根は73件のうち11件、鳥取は24件中6件にとどまる。山陰両県の区間で9割を占め、簡易ポールで上下線を区切った暫定2車線(片側1車線)では、運転手が途中で気付いて戻る可能性もある。島根県警高速隊の石塚徹副隊長は「道路の特性上、発見は容易ではない。なぜ逆走したのか原因をつかむのは難しい」と実態を語る。


死亡事故割合40倍

 高速道の逆走は、順行車と逆走車の速度が合算されるため、逆走車に気付いてから回避する行動を取るまでの時間は極端に短く、瞬間的な判断が求められる。大型車や気象条件によって前方の見通しが悪いと、突然、逆走車が現れる。逃げ場が少ない暫定2車線ではよりリスクが高まる。

 日本自動車連盟(JAF)は15年、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の開通前の一部区間で実験撮影し、逆走車遭遇時の再現動画を公開している。仮に時速80キロ同士で正面衝突した場合は、ビル10階から落ちた衝撃に相当するという。高速道路会社の調べでは、死傷事故になる割合が高速道での事故全体に比べて約5倍、死亡事故になる割合は約40倍にも上る。

 高速道路に関する著書がある高崎経済大の佐滝剛弘特命教授(交通論)は「命に関わる重大な問題で、対策を取る優先順位は高い。原因を究明し、実効性ある対策を一刻も早く打ち出さないといけない」と警鐘を鳴らす。

2017年11月19日 無断転載禁止