逆走問題編(4)試行錯誤 標識、表示だけでは限界

国土交通省が設置した逆走防止の注意看板(左)。事故ゼロに向けて試行錯誤が続く=松江市乃木福富町、山陰自動車道・松江道路の松江西ICランプ出口
 「とまれ! 逆走です」。山陰自動車道・松江道路の松江西インターチェンジ(IC)の連結路(ランプ)出口に看板がある。2013~17年10月末、松江道路で認知された逆走件数は22件。相次ぐ事態を受けて国土交通省が15年度、5ICの計10カ所に設けた。同じく8件発生した道の駅ゆうひパーク浜田(浜田市原井町)にも16年度設置した。

 国交省は16年3月、20年までの高速道路での逆走事故ゼロを目標に、対策の進め方を示す全体行動計画をまとめた。まずは視覚に訴える注意喚起標識や、誤進入を防ぐ簡易ポール設置を中心に進める。

 高速道路会社は14年9月以降、警察、国交省と連携し、過去に逆走が複数回発生した場所や、死傷事故が起きた場所計33カ所を抽出して対策を開始した。山陰両県では山陰自動車道・江津ICが対象になった。

 33カ所で年間20件(うち事故6件)発生した逆走は施工後は年間4件(うち事故0件)に減少。17年度末までに2970カ所に拡大し、16年度末で77・3%が完了した。同省高速道路課の津田剛彦課長補佐は「一定の効果を確認している」とする。


対策も件数横ばい

 しかし、対策が追い付いたとは言えない。高速道路会社が本格的に対策を始めた14年以降、高速道路の逆走は14年212件、15年259件、16年249件と推移。逆走による事故も14年50件、15年46件、16年57件に上る。

 現地調査した総務省は今年7月、対策が不十分として国交省に改善を要請した。内容は▽工事後に逆走が起きた場所があった▽工事完了した本線合流部73カ所のうち、24カ所で高輝度矢印板などが未設置(今年4月時点)-などだ。

 対策の根本を問い直す意見もある。「高齢者は動体視力が落ちている。標識や路面表示を多く設けて果たして効果があるのか」。国交省が設けた有識者委員会の委員が投げ掛ける。同省も全体計画策定時に「故意や認知機能の低下による逆走については、道路側の対策だけでは限界がある」と認める。


緊急時のルールを

 こうした状況を受けて、交通事故対策に詳しい自動車評論家の国沢光宏さん(59)=東京都=はより現実的な対策を求める。

 逆走開始地点の多くを占めるIC出口に、探知センサーと遮断ゲートを設置する案だ。センサーで逆走車を感知した場合、進入を防ぐバーが下りる。「逆走は10年以上前から表面化しており、国は未対策だったと言わざるを得ない。事故撲滅には踏み込んだ対策が必要だ」と持論を展開する。

 有識者委では、運転手が逆走に気付いた後の正しい行動も議題に上る。本線上で停車させるのか、路肩に寄せて止めさせるのか。緊急時のルール化は重大事故を防ぐためには欠かせない。軽度認知障害患者の逆走対策を研究する東京大大学院の二瓶美里講師(生活支援工学)は「ルールを定めて具体的な指示を看板や標識に落とし込めば、より効果が高まる」とする。逆走事故ゼロに向けて官民の試行錯誤は続く。

2017年11月22日 無断転載禁止