逆走問題編(5)技術開発 発展途上 重層的対策を

音声とともにカーナビに表示される警告のイメージ。逆走防止へ実用化が期待される(中日本高速道路提供)
 高速道路の逆走をなくすため、IT技術を駆使した試みが進む。注目は、次世代型の自動料金収受システム(ETC2・0)から発信された位置情報の電波を、道路沿いに設けたITSスポットという路側器が受信し、走行方向を判定。カーナビの表示と音声を通じて運転者に警告する仕組みだ。ナビの代わりにスマートフォンを利用する技術もある。人間は必ずミスを起こすとの前提に立ち、水際で食い止める手だてだ。

 国土交通省が掲げる2020年までに高速道路の逆走事故ゼロという目標達成に向け、高速道路会社は16年11月から約3カ月間、民間企業から対策技術を公募した。テーマは▽路面表示など視覚・物理的対策▽路側器で逆走情報を集める技術▽車載器による逆走車への注意喚起-の三つで、100件の提案技術から28件を選定した。ETC2・0とナビを連動させた試みもその一つ。28件については17年度に検証を行い、18年度からの実用化を目指す。

 カーナビやスマホで警告する技術の課題は、カーブなど道路形状で異なる電波の検知精度や、ETC2・0といった新型車載器の普及だ。技術を応用すれば、ドライブレコーダーが逆走時にしか見えない看板の裏側を捉えて警告することも可能で、逆走のマーク統一化が検討されている。

 中日本高速道路技術企画・開発チームの藤田友一郎サブリーダー(50)は「技術の活用次第で可能性は広がる。伸びしろがある分野だ」と展望する。


自動運転活用期待

 技術開発の進展はめざましい。政府は今年10月、日本版の衛星利用測位システム(GPS)をつくるため、準天頂衛星「みちびき4号機」を打ち上げた。本格運用に必要な4基体制が整い、18年度から誤差の小さな位置情報を提供する。山間部でも安定して高精度の情報が得られ、逆走車の特定や、自動運転技術への活用が期待される。

 ただ、国交省が設けた有識者委員会の委員で、帝塚山大の蓮花一己学長(交通心理学)は技術革新の流れを高く評価しつつも「自動運転車の製品化には10年はかかる。重層的な対策を講じないと、逆走事故はなくならない」とする。


ハンドル握る責任

 「人間と機械が情報をやりとりする先進技術『HMI』をカーナビと連動させれば、より正しい方向へ誘導できる」。有識者委の委員で、芝浦工大の春日伸予教授(心身医学、人間工学)=出雲市大社町出身=は現金自動預払機(ATM)などで応用が進むHMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)を提案する研究者だ。

 一方でアナログ的な対策の必要性を説く。多くの人が立ち寄るサービスエリアで、発生注意場所を示す運転者目線の写真や地図を並べるといった広報が効果的とし「未然防止には危険性を訴える地道な活動が欠かせない」と強調する。

 逆走は高い確率で生死に直結する事故になる。標識の見落としや故意のUターン、高齢化、間違えかねない道路構造など原因は複雑に絡み合う。まだ新技術が万能と言えない中、運転者がハンドルを握る責任をいま一度、かみしめることが撲滅の第一歩になる。

2017年11月23日 無断転載禁止