世事抄録 憲法9条と天皇退位

 暮れになると新聞に「今年の十大ニュース」が掲載される。少し早いが、もし国内で一番のニュースは何かと問われれば、安倍首相が5月3日の憲法記念日に唐突に発した改憲宣言と答えるだろう。今のところ、不戦の誓いを込めた第9条の1項、2項はいじらず、自衛隊の存在を3項に明記する加憲の提案だとされる。果たしてつじつまは合うのか?

 あえて差し替えるとするなら、2019年春に決まった天皇の退位、「平成」の終わりしかない。表面的には不倫だ、ミサイル発射だ…と騒々しくあおるだけの一年のようであったが、改憲、退位は時代がゴロリと転換する大予告である。

 天皇の交代には別の感慨が湧く。「普通の日本人だった経験がないので、何になりたいと考えたことは一度もありません。皇室以外の道を選べると思ったことはありません」。これは陛下自身が即位前の1987年、米国の報道機関に答えた言葉で、15歳当時の決意を約40年後に説明したものだという。

 だから人権を考慮せず、戦争の記憶を引きずる天皇制には学生時代から疑問が消えない。冒頭に象徴天皇を定めるわれらの憲法は、一貫して平和を希求してきた陛下と美智子妃に、かくも過酷な運命を強いてきたのだ。向こう1年半、その歳月にも思いを寄せながら改憲の顛末(てんまつ)を注視したいと思う。

(松江市・風来)

2017年11月23日 無断転載禁止