神話と笑い

 全国から八百万(やおろず)の神々が出雲に集まる「神在月(かみありづき)」。時雨(しぐれ)がちなこの季節、家にこもっていたくなるが、最近はわざわざこの月を目指してやって来る「通(つう)」な観光客も増え、観光地は活気づく▼とにかくそれは、先人が残した出雲神話のおかげ。その有り難い神話を題材に、上方落語協会会長の桂文枝(ぶんし)さんが創作落語に取り組んでいる▼タイトルは「神話落語・はじまりは高天原(たかまがはら)-須佐之男命(すさのおのみこと)と草薙(くさなぎ)の剣(つるぎ)」。なるほどそうきたか。山陰地方に住む者にとって古事記の世界は身近。タイトルを聞いただけでスケール感が予想できる。話にすっと入っていけるが、世の中すべてがそうとはかぎらない▼文枝さんの取り組みも、「神話を知らない子どもが増えた」という危機感からスタート。山陰には神楽が残り、歌舞伎や能、狂言などの古典芸能には神話を題材とした演目が多いが、ゲーム世代の子どもには神話に触れる機会が少ない▼文枝さんはいつも半歩先を行く。2006年、開席したばかりの大阪天満天神繁昌亭(はんじょうてい)で、文枝さん(当時は三枝さん)を取材したことがある。「大阪は落語の本場、ここから盛り上げたい」と言っていた。今や人気の寄席になった▼落語は、仏教の教えを分かりやすくした説法が起源とされるが、神話にはもっと古い形がある。文枝さんの噺(はなし)にも出てくる天照大神(あまてらすおおみかみ)は天の岩戸に隠れるが、外のにぎやかな笑い声に誘われて思わず岩戸を開けたことで万事丸く収まった。落語のオチ風にいうと、「笑う神には福来る」である。(裕)

2017年12月1日 無断転載禁止