女子ログ 松ぼっくりに火がついた

 十数年前、出版社に勤めていた時のこと。新入社員の女の子の教育係を仰せつかった。元気でよく働く子だが、面白い言い間違えがやたら多かった。

 ある日のランチタイムに小声で「先輩、編集のAさんってば完全に部長のイソギンチャクですよね」「…それ、腰ぎんちゃくのこと?」。まぁペッタリくっついてる感じはよく出てるけど。

 しばらくして彼女と夕食をともにした折、恋愛相談を受けた。一度別れたカレシと劇的な再会を果たし、また付き合うことになったのだという。

 「松ぼっくりに火がついたって感じなんですよ!」。照れくさそうに話す彼女に(それ、焼けぼっくいの間違いじゃ…)とは言い出せなかった。まあいいか、松ぼっくりならよく燃えそうだし。

 かくいう私も彼女を笑ってばかりはいられない。

 「団塊の世代」を30歳近くまで「だんこんのせだい」と読み違えていたし、蕎麦(そば)屋の紺地に白ののれんに記された「生蕎麦」の3文字を「きそば」と読むのを知ったのはさらに後のことだ。

 彼女も私も、赤っ恥をかきながら一つ一つ覚えていった――言葉もマナーも常識も。誰かに叱られるのはつらいが、誰からも叱られないのはもっとつらい。50歳近くなった今、しみじみそう感じる。「言わぬが花」ならぬ「言われるうちが花」なのである。

(大田市・ぽのじ)

2017年12月6日 無断転載禁止