ラブレター代わりの年賀状

 これまでの人生で一度だけ、「ラブレター」を書いたことがある。大学生だった二十数年前、携帯電話が普及していなかった時代。封書は気恥ずかしいし、何より便箋にしたためるほどの内容が思い付かない。固定電話は本人が電話を取ってくれるとは限らない。悩んだ揚げ句、年賀状に思いを託した。年賀あいさつに続き「追伸…僕と付き合ってほしい」とだけつづった▼彼女は返信してくれるのか。期待を抱き、下宿先の郵便受けをのぞく日が続いた。1週間ほどが経過し届いた賀状には清楚(せいそ)な字で「ごめんなさい」と一言。青春の日を彩る甘美な思い出である▼人付き合いは煩わしいという風潮があるが、人とのつながりで人生は豊かになる。相手がさりげなく添えた一言で温かな気持ちになったことは一度や二度ではない▼メールや会員制交流サイト(SNS)の普及で、一時、40億枚を超えた年賀はがき発行枚数は約26億枚に減った。一方で、松江市では拡張現実(AR)を活用した「動く年賀状」の取り組みが始まった。形はどうあれ、新年を迎えて、互いの多幸を願う日本人特有の心遣いは継承したい▼52円に据え置かれた年賀はがきは8日以降、通常料金に戻るため10円切手が必要となる。貼らずに出すと16日以降は差出人に返却されるか、受取人負担となる▼恋心を伝える際は特に注意したい。自宅に返ってきて家族に見られようものなら目が当てられないし、相手に支払わせるようでは「デリカシーのない人」と烙印(らくいん)を押されかねない。(玉)

2018年1月3日 無断転載禁止