レッツ連歌<2018年新春特集>(下房桃菴)・1月11日付

 あけましておめでとうございます。

 「レッツ連歌」も、25年目の春を迎えました。ますますお引き立てたまわりますよう、心よりお願い申しあげます。

           ◇

挿絵・岡本健一

 ドルやユーロも交じる賽銭(さいせん)

元日の冷気つんざく神楽舞 (江津)星野 礼佑

福の神世界狭しと駆け巡り (出雲)安食 羊一

歴史好きサムライ日本気に入って

             (川本)高砂瀬喜美

神様も辞書を片手に願い聞き  

             (出雲)藤原 昌子

ヨーロッパアメリカの旅無事終えて

             (益田)竹内 良子

金髪に赤い振袖よく映えて (出雲)野村たまえ

外国の人も思いは同じにて

         (広島・北広島)堀田 卓爾

神様も堪能になる五か国語 (出雲)平井 悦子

神様もいまやスマホは必需品(松江)加茂 京子

駆け足でニューヨークから帰省して

             (松江)植田 延裕

高見山旭鷲山に琴欧州   (松江)田中 堂太

ドロボーも為替相場をチェックして

             (益田)黒田ひかり

両替はいたしませんの注意書き 

             (松江)小豆澤悦子

神様も語学留学迫られて 

          (沖縄・石垣)多胡 克己

緋袴(ひばかま)を脱ぎ捨てて行く英語塾(益田)石田 三章

銀行も総動員でする仕分け (出雲)行長 好友

ミエはって諭吉を投げた初後悔

           (隠岐の島)浅垣 多世

外国の人も知ってるカミダノミ 

             (松江)学園 花子

長年の移住政策実を結び  (浜田)放ヒサユキ

分院がハワイにもある大社 (飯南)塩田美代子

高額に見せかけ実は減額し (松江)相見 哲雄

ニセ札も相当あるという噂(うわさ) (江津)岡本美津子

良縁を願いバツイチ指輪投げ(江津)星野 正子

投げ入れる音聞き分ける神仏(松江)澄川 高子

毎年のことだがちょっと違う音 

             (松江)今岡笑美子

狛犬(こまいぬ)もワンダフルとて口を開け 

             (松江)森廣 典子

ニッポンに永住するとかれは言う (松江)花井 寛子

少しずつ景気回復してきたか(松江)川津  蛙

前うしろどこから見てもただの石

             (松江)岩田 正之

一葉がひとりモテてる箱の中(出雲)山下  好

来年はどげなお守りこさえーだ 

             (松江)石塚 修三

豪華船境港に押し寄せて  (江津)江藤  清

苔(こけ)むした五百羅漢がほほえみて 

             (松江)高木 酔子

アイキャンとカズオイシグロノーベル賞

             (米子)板垣スエ子

ありがたや神祇(じんぎ)太鼓の鳴りやまず

             (浜田)玉田 秀子

とりあえず日本に行けば仕事ある

             (益田)大居 鴻平

年末に世界一周終えたジジ (松江)佐々木滋子

お年玉もらったけれど使えない 

             (出雲)岩本ひろこ

使い道あったと胸を撫(な)で下ろし 

             (出雲)井上 七重

神様も租税回避に大わらわ (益田)石川アキオ

フォークにて上手に食べる割子そば

          (埼玉・所沢)栗田  枝

住職は小僧を連れて洋行し (浜田)滝本 洋子

巫女(みこ)さんは留学生のアルバイト

             (浜田)勝田  艶

ありがたみ毎日変わる円相場(雲南)横山 一稔

おみくじに景品つけた甲斐(かい)ありて

             (江津)大岩 郁夫

重宝な最新鋭の両替機   (美郷)源  連城

こたつからテレビニュースへ手を合わせ

             (雲南)安部 小春

長身の旅人なにを祈るやら (浜田)松井 鏡子

通訳に四苦八苦する掛けまくも 

             (松江)三島 啓克

世界中困ったときの神頼み (松江)澄川 克治

イマイチなポン太ゴン太の初仕事

             (益田)可部 章二

横文字で願い書かれた絵馬下がり

             (松江)持田 高行

出雲では柏手こうとやってみせ 

             (益田)吉川 洋子

二千円札と神主思い込み  (出雲)石飛 富夫

ご利益はレート次第で変動し(美郷)芦矢 修司

十九社も洋式トイレ完備して

          (兵庫・明石)折田 小枝

通訳は要らない世界なんだろな(美郷)源 瞳子

地球儀をクルクル回す神議(かみはか)り(雲南)錦織 博子

神様も国際結婚視野に入れ (出雲)原  陽子

境内の案内板もデカくなり (江津)花田 美昭

ワタシタチカイゴノシゴトシテイマス

           (出雲)はなやのおきな

世界中平和の鐘が鳴り響き (出雲)飯塚猫の子

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 お札になった女性も、世界中には数多いことでしょうが、一葉ほど若い美人はそうそうおりますまい。功成り名遂げたあかつきには、たいがいお婆さんになっているわけで…。モテるはずです。

 参拝客に焦点を合わせた作品が多かった中で、艶さんの句には虚を突かれました。みなさん、悔しくありませんか。私は悔しいです。

 啓克さんの句、下五がステキです。これがもし、「祝詞上げ」だったら、単なる説明で終わってしまいます。

 それに、もう一つ、この下五にはシカケがある。「掛けまくも」は祝詞の冒頭のことばですが、この冒頭だけが通訳困難というわけではないでしょう。「…畏(かしこ)み畏みも申す」に至る祝詞全体が、きっとそうなのです。

 同様のことは、歌の題名などにもよくあります。早い話が、「君が代」といえば、「…苔のむすまで」全部を指します。仮名四十七文字を「いろは」と略称し、アルファベットを「ABC」で済ませるのと同じ理屈です。その「アルファベット」ということば自体も、語源はギリシャ語の「アルファー・ベーター」なのだそうです。

 レッツはタメになりますね。

           ◇

 今を去ること30年前、師匠の故鈴木長駆先生とふたり、JRの津和野から松江までの車中、沿線の駅名を詠み込んで、歌仙を巻いたことがあります。およそ5分で1句を詠んだ計算! 当時私が45歳、長駆先生もやっと還暦。若いからできたのでしょう。

 その作品を、今年はお目にかけます。歌仙の詳しい説明は省略しますが、要は、発句(ほっく)(第1句)から揚句(あげく)(第36句)まで、五七五と七七を交互につなげていく遊び、とだけご理解ください。第4木曜日のレッツと、基本的に同じです。ただ、それに、駅名を詠み込むという「難題」を、自ら課してみたわけで。


賦津和野松江間JR駅名連歌

 昭和六十三年三月初旬、鈴木長駆、下房桃菴両人、石州津和野に堀幸清氏蔵書の調査に赴く。折しも北風激しくして、雪さへ降り添へたれば、寒きこといと耐え難し。やがて帰路に就くとて、車中津和野より松江までの駅名を賦して歌仙巻かんと、いづれよりともなく言ひ出でて、もとより名を得し数寄者どもなれば、旅の憂さをも打ち忘れ興に任せて続け侍るままに、ほどなく松江駅には帰り着きぬ。


初オ 雪しきり津和野の古き酒林   長 駆

   冬枯れもせぬ塀の黒松     桃 菴

   貧書生毎日腹をすかしゐて     駆

   業つくばりの身の成れの果て    桃

   此処にしも皓々月の照らすらん   駆

   薄に混じる六つの草々       桃

初ウ 少女らが紅葉狩る岡見ゆる道    桃

   愛を信じてひとり籠れる      駆

   移らふや変はらぬとこそ契りしに  桃

   厚き面皮まじまじと睨め      駆

   早くしろ利子は五割に負けてやる  桃

   とんでもにやあことおべえますだは 駆

   貴重本跨がつて行く新人類     桃

   跳ねつ返りに汗をかく月      駆

   鶯はまだか気の急く山住まひ    桃

   いつも静かな霞なりけり      駆

   家苞に御室の花を枝折りて     桃

   下り居の宮にあさり賜はる     駆

名オ ミセス三保ミス三保に化け不倫らし 駆

   鎌手に取りて迫る心中       桃

   さなきだに角突き合はす日頃にて  駆

   草食て育つ隠岐の黒牛       桃

   陽の昇る東青原西浜田       駆

   知る人ぞ知る名所磯嶽       桃

   評定所堂上気質を持てあまし    駆

   静まりをらう無礼者奴が      桃

   これはもう箸にも棒にも掛からざる 駆

   雨降り続き待ちかぬる月      桃

   赤黄青野山は秋に装へど      駆

   仮寝の床に臥せる小田守      桃

名ウ 夢にまで喜寿の祝ひは見つ楽し   桃

   かうかうなんと触れて廻るも    駆

   ゆさゆさと髪靡かする歩き巫女   桃

   百姓ばらも鼓腹撃壌        駆

   去年よりも石見福満つ花の下    桃

   松江へ送る海苔を干す浜      駆

 ここで今年の新春クイズです。

 この歌仙に詠み込んだJRの駅名を、ぜんぶ答えてください。

 ヒント1 発句には「津和野」、揚句には「松江」が、そのまま詠み込んであります。(これは見れば分かる)

 ヒント2 その間の34句には、ぜんぶで36の駅名(順不同)が、ダジャレで詠み込んであります。(二つの駅名を詠み込んだ句が2句ある)

 なお、旧仮名で表記しているため、ちょっと読みづらいかもしれません。また、ふだんあまり使わない漢字も出てきますが、クイズということで、あえてルビは振らないことにいたします。

 正解は次回のこのコーナーでお知らせしましょう。それまでゆっくりお楽しみください。

           ◇

 次の前句です。

  あきれ返って物も言えない

 実はこの前句は、先の歌仙をある人に見せたとき、大学のセンセというのは、こんなバカなことをやっているのかと、びっくりされたそのことばを、そのまま頂戴いたしました。

 そのくせ、このとき調査した蔵書がその後、島根大学付属図書館の「堀文庫」となって、一躍全国に知れ渡った、などということは、だれ一人評価してくれません。…ま、それはいいです。

 この前句に、物も言えないような長句(五七五)を付けてみてください。

(島根大学名誉教授)

2018年1月11日 無断転載禁止

こども新聞