イ号乗組員救助を絵本に 江津の市民グループら

日露戦争中にロシア船乗組員を地元住民らが救助した史実を伝える絵本「こっちへこーい こっちへこーい~イルティッシュ号の来た日」
 日露戦争中に島根県江津市沖で沈没したロシア艦隊の特務輸送船イルティッシュ号(イ号)の乗組員を、地元住民らが救助した実話を基にした絵本「こっちへこーい こっちへこーい~イルティッシュ号の来た日」が、同市内の10個人・団体でつくる実行委員会により出版された。敵国だったロシア乗組員の命を助けた、地域の先人たちの勇気と人類愛を広く知ってもらおうと制作。20日には市内で記念フォーラムも開き、史実を分かりやすく伝える。

 イ号は1905年5月、日本軍の砲撃を受け、日本海を北上中に同市和木町沖で沈没。和木町周辺の住民らは船を出すなどして、乗組員200人以上を救助した。これにちなみ、同町では毎年、先人の勇気ある行動を顕彰する「ロシア祭り」が開かれている。

 絵本制作は、市民グループ「“伝承の技を紡ぐ”竹タックの会」や和木町住民でつくる「和木まちおこし実行委員会」などでつくる実行委が企画。ロシア船出現に驚きつつも、住民らが協力して乗組員を助けた様子や、現在もロシア祭りなどを通じて史実を語り継いでいることなどを記した。絵は、同市在住のイラストレーター・みはしたかこさん(43)が手掛けた。

 A4判、32ページで非売品。1800部作製し、市内の小中学校や高校、保育所のほか、県内の図書館などに贈る。子どもが読みやすいよう文章の漢字には振り仮名を付け、当時の時代背景をまとめた解説文も付記。巻末にはロシア語と英語の訳文、安来市加納美術館の神英雄館長の特別寄稿文を載せた。

 実行委の五十嵐百合子会長(71)は「先人たちの人間愛に思いをはせ、平和の尊さをあらためて心に刻む一助となればうれしい」と話す。

 また、実行委は出版記念フォーラムを20日午後1時半から、江津市江津町のパレットごうつで開く。同絵本の読み聞かせや神館長の講演などがある。入場無料。問い合わせは、市人権啓発センター内の実行委事務局、電話0855(52)1018。

2018年1月13日 無断転載禁止