紙上講演 大阪経済大学客員教授 岩本 沙弓氏

岩本 沙弓氏
2018年内外経済の展望

   消費増税最大のリスク

 山陰中央新報社の島根政経懇話会、米子境港政経クラブの定例会が29、30の両日、松江市と米子市で開かれた。大阪経済大学客員教授の岩本沙弓氏が「2018年内外経済の展望」と題して講演し、19年10月に予定される消費税増税のリスクを指摘し、幅広い税議論の必要性を説いた。要旨は次の通り。

 政府が発表した1月の月例経済報告によると、日本経済の景気は「緩やかに回復している」。アベノミクスの推進により、景気回復の長さは戦後2番目の「いざなぎ景気」を超え、データ的にはいいステージに入っている。ただ、国内総生産(GDP)の6割を占める個人消費は、持ち直しつつあるものの、国内需要をけん引する力強さは欠いたまま。消費税増税ならば消費低迷は避けられない。今後、増税が最大のリスクと言える。

 20%を超す付加価値税を課す欧州諸国に比べて、日本の消費税率は低いとされているが、租税収入に占める割合は32%に達する。欧州で最高水準の25%の税率を課すスウェーデンでも割合は24・9%で、税収がいかに消費税に偏っているかが分かる。財政再建を理由に導入した消費税だが、法人税や所得税減税に伴って歳入の増加に結びつかず、財政は悪化している。

 一方、企業収益は好調で、多くの会社が内部留保をため込んでいる。現行の税制では利益の増加が、法人税収や社員の賃上げにつながりにくい仕組みだ。内部留保への課税は非現実的だが、会計上の益金や損金を調整するなど、現実的な手法もある。財政再建は消費増税に頼らず、バランスの良い税収のあり方を探りつつ、歳出削減にも取り組むといった抜本的な対策が必要になる。

 また消費税は輸入品にかかるが、輸出品には課税されず、還付金もある。このため増税の影響は輸出型の大企業より、内需型の中小企業に対して大きく、地方経済に打撃となる。国として消費税を導入していない米国では、消費税を「関税」とする見方があり、税率を引き上げれば、反発が予想される。先進地である欧州でも消費税の見直し議論が活発化しており、国際的な動きにも目を向けるべきだ。

2018年2月1日 無断転載禁止