女子ログ ブラスバンドの音色

 曇り空の下、乾いた洗濯物を取り込みに外に出ると、遠くから中学生のブラスバンドの音色が聞こえてきた。私も中学時代、ブラスバンド部に所属していたが、こんなに遠くまで響くのだとあらためて驚いた。その音を聞くと、ついひと昔前に思いをはせてしまう。

 当時、必死になって練習に打ち込んでいた。その一方で大人に憧れを抱き、どんな仕事につきたいか、どんな人と結婚したいかなどを友達と語り合っていた。

 部活動の後はヘトヘトになりながらも家まで45分、自転車をこいだ。冬は日が暮れるのが早くて寒さも苦手だった。特に1人のときは心細く、民家もない外灯もまばらな田んぼ道を進むスピードはいつもより速くなった。

 そんなとき、どこかの家から煮物やカレーの匂いが漂ってくると途端におなかがすいて、家族で囲む温かい夕ご飯が無性に恋しくなった。息を切らせてたどり着いたわが家の明かりに、ほっと安堵(あんど)したのを覚えている。

 それから数年、大人になった今は結婚し、母となった。今度は自分が子どもを学校へと送り出すことになるだろう。学校から帰ってくるときは、温かいご飯を作って迎えてあげたい。

 肌寒い風とともに聞こえてきた夕暮れどきの音は、いろいろな思いを呼び起こす優しい音色だった。 

  (鳥取県大山町・茶ノ丸)

2018年2月3日 無断転載禁止