君たちはどう生きるか

 総合雑誌というジャンルは、縮小する出版市場でも廃刊や休刊が相次ぐなど苦境に追いやられつつある。政治や経済を中心に幅広く時論をリードしてきたが、最近はあまり話題にならない。その中で岩波書店の「世界」は戦後すぐ創刊されてから今も命脈を保つリベラル派の代表誌▼その「世界」の初代編集長を務めた吉野源三郎原作「君たちはどう生きるか」が出版界をにぎわせている。漫画家の羽賀翔一氏による漫画版は、昨年8月の発売から今年1月までに130万部を超えるミリオンセラーとなり、同時に刊行された原作単行本も35万部のアベックベストセラー。山陰の主要書店でも売れ行きを伸ばしている▼原作が発表されたのは戦前だが、「どう生きようと大きなお世話だ」と反発を誘いそうな人生論風のタイトルが逆張りで時代の空気に刺さったのかもしれない▼漫画にして読みやすくしたこともあるのだろうが、主人公の旧制中学生と叔父さんとの間で交わされる人生相談を、自分に重ねてみる人も多いのではないか▼ものの見方を広げながら、考え悩む。そのこと自体が人間の成長であり、正解のない人生を自分自身の考えで歩んでいく。原作発表当時は日中戦争が始まるなど軍国主義が台頭した時代であり、「一同右に倣え」に流されない主体性を語りかける▼戦後ある時期まで総合雑誌を主舞台とする論壇は、スター論客が次々登場して活気づいた。オールドリベラリストによる人生論という古びた表紙がかえって新しい。(前)

2018年2月12日 無断転載禁止