1票の格差判決/国会への厳しい警告だ

 昨年10月の衆院選を巡る「1票の格差」訴訟の判決で、名古屋高裁は「違憲状態」とする判断を示した。全国14の高裁・高裁支部に起こされた一連の訴訟では、これまでに東京高裁などで10件の判決があり、「合憲」とする判断が相次いでいたが、そうした中、憲法が求める「投票価値の平等」を厳格に捉え、初めて異なる結論を出した。

 最大格差が2倍以上の過去3回の衆院選を「違憲状態」とした最高裁は「2倍以上にならないようにする」との衆院選挙区画定審議会設置法の趣旨を評価し、選挙制度の見直しを促した。これを踏まえ、10件の判決はいずれも、小選挙区比例代表並立制の導入以降、昨年の衆院選で格差が1.98倍と初めて2倍未満となった点を重視した。

 だが、こうした判決とは対照的に名古屋高裁は「憲法上、議員1人当たりの選挙人数ができる限り平等に保たれるのを最も重要かつ基本的な基準とすることが求められる」とした上で「格差は極めて2倍に近く、容易に看過し得ない」と指摘した。小幅修正を繰り返し、根本的な解決を先送りしてきた国会に厳しい警告を発したといえる。

 「厳密すぎる」「他の判決は全て合憲」との声もあるが、投票価値の平等は民主主義の根幹に関わる。人口の大都市集中で影響を受ける地方の民意をどうくみ上げるかも含め、対応の検討を急ぐことが求められる。

 最高裁は最大格差が2.43~2.13倍だった2009年、12年、14年の衆院選をいずれも違憲状態と判断した。その中で、47都道府県にまず1議席ずつ割り振り、残りを人口比で配分する「1人別枠方式」について「投票価値の平等と相いれない作用を及ぼす」とし、できるだけ速やかに廃止する必要性を説いた。

 国会は解散直前の12年11月の法改正で、1人別枠方式の規定を削除し、定数も「0増5減」としたが、翌月の選挙には区割りの改定が間に合わなかった。14年選挙で3度目の違憲状態となり、16年5月に定数の「0増6減」を先行させ、人口比を反映しやすいとされる新たな議席配分方法の「アダムズ方式」を20年の国勢調査に基づき導入する制度改革関連法が成立した。

 10年調査を踏まえ直ちにアダムズ方式を採用する野党案は与党などの反対多数で否決された。17年6月には、19都道府県97選挙区で区割りを改定する改正公選法が成立して昨年の選挙に至る。

 制度改革には党利党略や国会議員の利害も絡むため、すんなりとはいかないだろうが、あまりにも腰が重い。

 名古屋高裁判決は、アダムズ方式による議席配分は10年国勢調査を基に昨年の選挙にも適用可能で、その場合は18都県で7増13減になったとし「法技術的に不可能または困難だった事情はうかがわれない」と指摘した。さらに1人別枠方式に触れ「国会に最高裁判決を尊重する意思があったか疑問が生じざるを得ない」と述べている。

 一方で国会の取り組みを一定程度評価し、違憲とは認めなかった。残る高裁・高裁支部の判決が出そろってから最高裁が統一判断を示すことになるが、国会は今回の判決を真摯(しんし)に受け止め、格差をでき得る限り1対1に近づける努力を加速させる必要がある。

2018年2月14日 無断転載禁止