レッツ連歌(下房桃菴)・3月8日付

(挿絵・麦倉うさぎ)
 あのころはよかったと言う大富豪

赤い手拭マフラーにして    (益田)黒田ひかり

妻と子がいて父母もいて    (出雲)行長 好友

妻には去られ子には背かれ   (益田)石田 三章

失う怖さ知らぬ若き日     (出雲)野村たまえ

聴衆集めに部下四苦八苦    (益田)大居 鴻平

利子の付かない預金通帳    (出雲)原  陽子

バナナ一本姉と分け合い    (松江)中村 清子

グチる相手は仏壇の妻     (雲南)妹尾 福子

打ち出の小(こ)槌(づち)どこへやったか  (江津)大岩 郁夫

前後左右に芸(げい)妓(こ)侍らせ (広島・北広島)堀田 卓爾

頭に乗せた眼鏡探しつ     (浜田)勇 之 祐

大統領になってしまって    (松江)持田 高行

金では買えぬ若い肉体    (奥出雲)松田多美子

ついていけない紅白の歌    (益田)石川アキオ

ホントですねと糟糠(そうこう)の妻    (松江)森廣 典子

話し相手はいつもロボット   (米子)板垣スエ子

ОPECもなくなんぼでも売り (益田)可部 章二

介護施設じゃ子供扱い     (益田)石川アキオ

今や年収たった百億      (松江)庄司  豊

電子レンジでひとり餅焼く(埼玉・所沢)栗田  枝

そんなセリフで映画始まる(沖縄・石垣)多胡 克己

宝くじ買う楽しみもなく    (松江)山崎まるむ

はがき一枚まだ四十円     (松江)植田 延裕

酒と女は毎晩のこと      (出雲)川上 光子

競争相手いない淋(さび)しさ     (浜田)山崎 重子

手をすり合わすヤツもいなくて (松江)田中 堂太

川の字で寝た中古マンション

           (東京・八王子)藤江  正

望郷の念つのるこのごろ (埼玉・所沢)栗田  枝

           ◇

 「あのころはよかった」なんて、大富豪になってから言われても、そんな話はだれも聞きたくはない。部下の苦労が思いやられます。

 惜しいことしましたね、郁夫さん。打ち出の小槌が手に入ったのなら、まず一番に、打ち出の小槌を打ち出しておくべきでした。

 アキオさんの「ついていけない」は、だれしもいずれ味わう淋しさ。でも、ご安心あれ!

 私ごとですが、過日、久しぶりに、小学校の同窓会に行ってきました。2次会はカラオケということで、最初はあまり気乗りしなかったのですが、出る歌出る歌、昭和の歌。いつしか私も、つ~いて来いと~は、言~わぬ~の~に~、…自分の声に酔いしれておりました。

 昔は貧しかったけれど、若さにあふれ希望に満ちて…、みたいな句が多かった中で、「今や年収たった百億」には、正直ド肝を抜かれました。

 まるむさんの「宝くじ」にも虚を突かれましたが、なるほど、大富豪なら宝くじなど買うわけはない。それでも買えと、もし言われたら、…「すると、なにかいな、仮に1等が当たったところで、5億円さえ払ろたらええんかいな。…アッ、ハッ、ハッ、ハ」―。なんだか、ニセ富豪のような気がしてきました。

 はがき一枚の値段が気になるほどの大富豪というのも、どうも怪しい。それで大富豪なら、私も立派な大富豪。みなさんも、失礼ながら大富豪。めでたし、めでたし!

           ◇

 次は、

  君いてこその四月一日

に長句(五七五)を付けてください。

 四月一日といえば、エイプリルフールですが、年度初めで、新入社員とか、転勤・転居などという話題にも事欠きません。

 実は、この前句にまつわる感動的な話があるのですが、句作りの邪魔になってはいけませんので。今のところは伏せておきます。

(島根大学名誉教授)

2018年3月8日 無断転載禁止

こども新聞