三江線客にも愛された味守る 美郷の饅頭屋「松島甘源堂」65周年

自慢の饅頭を紹介する松島長男さん(左)と順子さん
 島根県美郷町大和地域で唯一の饅頭(まんじゅう)屋「松島甘源堂」が65周年を迎えた。看板商品の「利久饅頭」は、夫婦2代にわたり受け継いできた味。お土産やお茶請けとして重宝され、三江線の旅行客にも喜ばれた美郷名物だ。廃線で観光客が減るという不安はあるが、ほそぼそとでも店を守り続けたいと決意を新たにしている。

 まだ日が上らない午前5時。同町都賀本郷の店舗の隣の部屋に明かりがともる。饅頭を作る小さな工場だ。作業するのは松島長男(たけお)さん(70)と順子さん(68)夫婦。包あん機で皮にあんを包み、せいろに並べて蒸していく。出来上がったのは利久饅頭。1日平均400~500個を製造し、10個入り570円で販売する。近隣の温泉施設や産直市などにも出荷し、販売している。

 黒糖入りの皮が一般的だが、砂糖を焦がしたキャラメルを使用しているのが特徴。程よい甘さと香ばしさが好評という。「作り方は聞き伝え」と順子さん。「味は変わらない」と長男さんが接ぎ穂した。

 饅頭の製造販売を始めたのは、長男さんの父末示(すえじ)さんと母サダコさん夫婦。1952年7月に店を構え、最盛期には7種類の饅頭を作り、見習い職人も1~2人いたという。利久饅頭は一番の売れ筋商品。手伝いをしていた順子さんが一足先に製造を引き継ぎ、今では、定年退職した長男さんと二人三脚で伝統の味を守っている。

 75年に三江線が開通した当時は大和地域が活気づき、近くの温泉も団体客でにぎわったという。順子さんは「利久饅頭はお茶請けで出され、お土産の注文も多かった」と話す。

 三江線は3月末で廃止になるが、今でも広島から注文が入る。長男さんは「廃線はさみしいが、『饅頭を送ってほしい』と言ってくれる人がいる。美郷の名物として喜んでもらえるよう、この味を届けていきたい」と話した。

2018年3月13日 無断転載禁止