佐川氏証人喚問/多角的な検証が必要だ

 学校法人・森友学園への国有地売却に関する財務省の決裁文書改ざん問題で、改ざん時に理財局長だった佐川宣寿前国税庁長官が衆参両院の予算委員会による証人喚問に臨んだ。喚問は4時間余りに及び、佐川氏の改ざんへの関与はもとより、過去の国会答弁と国会や国民に隠されてきた交渉経緯などとの食い違いなどに質問が相次いだ。

 しかし、誰が何のために指示したか-など改ざんの理由や経緯について佐川氏は「刑事訴追の恐れがある」として固く口を閉ざした。喚問後に8億円余りの値引きや文書の廃棄・改ざんを巡り背任、虚偽公文書作成などの容疑で告発を受け捜査している大阪地検から事情聴取されるのを強く意識したとみられる。

 一方で、安倍晋三首相周辺からの指示は明確に否定。さらに「私や妻が関係していたなら、首相も国会議員も辞める」とした昨年2月の首相答弁は自らの国会答弁に影響しなかったとし、昭恵夫人が売却に影響を与えたとは考えていないとも述べた。改ざんを巡る政府の一連の主張に足並みをそろえた形になった。

 佐川氏は核心を語らなかった。真相解明の正念場はこれからだ。財務省が内部調査の中間報告をできるだけ早く示し、昭恵夫人や佐川氏以外の財務省幹部の国会招致で多角的な検証を行う必要がある。首相は「徹底解明」を表明した。言葉通り、あらゆる手だてを尽くすべきだ。

 森友学園に売却された大阪府の国有地が8億円余り値引きされていたことが昨年2月に公になり、佐川氏は国有財産を管理する理財局のトップとして国会答弁を一手に引き受けた。野党は、学園が開校を計画した小学校の名誉校長は昭恵夫人で、特別扱いの疑いがあると一斉に追及した。

 佐川氏は売却の窓口となった近畿財務局と学園との交渉記録は廃棄したとし、詳しい説明を拒否。当初の借地契約と最終的な売却契約を巡る事前の価格交渉や政治家の関与を全否定し、外部からの問い合わせの記録はないと答弁した。夫人についても「近畿財務局は小学校の話を全く承知していなかった」と述べ「適正取引」を強調した。

 だが財務省が公開した改ざん前の文書には、借地契約前に「貸付料の概算額を伝える」との記述があり、「概算貸付料が高額で、何とかならないか」といった複数の政治家の問い合わせも記録されていた。売却契約に向けた価格交渉の音声データもある。

 当初、買い取りを前提に学園が希望した借地契約をいったん断った財務局が、交渉中に学園側が昭恵夫人の名前と発言を出して1カ月ほどで「協力させていただく旨」を伝えた経緯も改ざん前の文書に記されていた。

 喚問で佐川氏は価格交渉に関する答弁は「正しかった」としたが、交渉記録廃棄の答弁は「丁寧さを欠いていた」と述べた。しかし本当に理財局の一部職員だけで判断し、改ざんという国民に対する重大な背信行為に手を染めたのかという疑問は拭えない。

 麻生太郎副総理兼財務相は、佐川氏が改ざんの「最終責任者」と早々と名指しし理財局主導の構図を語ってきた。財務省も佐川氏の関与を強調して内部調査を進めているが、調査結果の詳細な検証が必要になるだろう。

2018年3月28日 無断転載禁止