世事抄録 日記を読む

 約40年前、アメリカの随筆家ヘンリー・D・ソロー(1817~62年)の日記を読んだ懐かしい思い出がある。彼は昨年、生誕200年を迎えた。彼の日記は著作集20巻のうち14巻を占め、約7千ページにも及ぶ。まさにギネスものといったところである。

 今では「森の生活-ウォールデン」など自然文学におけるソローの評価は世界的に揺るぎないものとなっている。しかしながら、当時は見直され始めたばかりで、それほど知られていなかった。この日記を前にして、私の貧弱な英語力をいろいろと考えながら、「これが果たして読めるだろうか?」と何度も自らに問うた。「まあ、とにかく挑戦してみよう!」ということになった。

 ソローは日々山野を歩きながら身近な自然を実に生き生きと描いている。それらに感銘を受けながら読んでいると、魅力いっぱいの彼の生き方や人格が見え隠れする。そういうことを繰り返しているうちに、ほとんど退屈することなしにとうとう彼の日記を読み切ってしまったのである。日記は主として生活を題材とするだけに構えたところがなく、しっくり読める強みがある。

 ソローの日記はその後の私の生き方を決定し、人格を形成したといっても過言ではない。これを読んだことを今も私は誇りとしている。

(鳥取県大山町・伯耆のウリボウ)

2018年3月29日 無断転載禁止