レッツ連歌スペシャル(要木木純)・3月29日付

(挿絵・麦倉うさぎ)
 失敗がまた失敗の母となり

というのが、今回の前句。「失敗は成功の母」をもじってみました。このことわざの由来については、いつ、誰が言ったのか、ややこしい点があるようですが、それはともかく、私も子どものころから、自らに言い聞かせてまいりました。しかし、なかなかそうはいかないのが人生。二、三べんのしくじりなら、立ち直れるのですが、あがけばあがくほど、失敗が失敗を呼び、泥沼状態に陥ることもしばしばですね。そんな時は、いったん休んで、連歌でも作りましょうか。

 なかなか失敗の沼から脱出できない、わが身のふがいなさ。

誤字に気づかず出した詫び状  (益田)石田 三章

三度目なのにひょいとかわされ (美郷)吉田 重美

「もういっぺん」が口癖になり (益田)大居 鴻平

心機一転また酔いつぶれ(東京・八王子)藤江  正

口止め料ははずんでもらうぜ  (浜田)三隅  彰

 脅迫までされて、泣きっ面に蜂ですね。

 「失敗の母」の「母」は、比喩にすぎないのですが、実際のお母さんが目に浮かぶ方も多いでしょう。サザエさんみたいな、うっかりお母さんを詠んだ句も、それはそれで面白いものがあります。 

足せば足すほどまずくなる味  (雲南)渡部 静子

オリジナルカレーこれでやめてね

              (奥出雲)松田多美子

きのうで期限のケーキの行方は (松江)河本 幹子

女の涙複雑にすぎ       (雲南)錦織 博子

オレオレ詐欺にまたひっかかり (出雲)原  陽子

体重計の針は振り切れ     (松江)佐々木滋子

三日続けてトンカツを食う   (出雲)岩本ひろこ

 これらの句はお父さんじゃあ様にならない、お母さんこそふさわしい。

 これが一人のお母さんだけではなく、先祖から子孫までしくじり遺伝子が受け継がれていくわけですよ。

DNAを軽く見るなよ     (川本)高砂瀬喜美

いつしか猿は人に進化し    (益田)石川アキオ

頼みの手紙がひ孫から来る   (江津)森下 俊武

口下手なのが彼の気に入り   (松江)花井 寛子

 おかげで、口下手な子どもが生まれ、口下手な人は、必ず人口の何パーセントかを占めることになるのですね。

 かくして、言い訳、諦観、開き直り。

逃げ口上を先に考え      (雲南)横山 一稔

成長がないそれも人生     (出雲)吾郷 寿海

反省もなく後悔もなし     (浜田)勝田  艶

 失敗を気にすることはないんだよ、と自分を慰めるのはいいのですが、以下の句は、何か異様なポジティブさやこじつけがあって、そこにおかしみがありますね。

挑戦回数ギネスブックに    (美郷)芦矢 敦子

怖がることはないと教えて   (浜田)滝本 洋子

終わりに笑顔あればいいんだ  (浜田)佐々木わこ

占い界で今は大御所      (松江)澄川 克治

やまない雨はないと信じて   (松江)桑谷  夢

ゼロ、イチだけじゃない我が回路(益田)可部 章二

体験本がベストセラーに    (出雲)栗田  枝

 その他、気に入ったもの。口調やリズムがいい。

気にしない人気づかない人   (雲南)安部 小春

小さな嘘がことの始まり    (出雲)野村たまえ

教えて下さい糠(ぬか)漬けのコツ   (飯南)塩田美代子

収束しない無限級数      (松江)安東 和実

 もともと理系の私は、今回この句に一番感心したのですが、皆様方のご賛同は得られるでしょうか。

(島根大学法文学部教授)

2018年3月29日 無断転載禁止

こども新聞