陸自イラク日報/公文書管理の抜本改革を

 ないはずの文書がまた出てきた。小野寺五典防衛相は、2004年にイラクに派遣された陸上自衛隊部隊の日報が見つかったと発表した。日報は約1万4千ページに上り、昨年2月の国会で防衛省は野党議員からの資料要求に「不存在」と回答。その後、当時の稲田朋美防衛相が「確認したが、見つけることはできなかった」と答弁していた。

 防衛省は、南スーダン国連平和維持活動(PKO)に派遣した陸自部隊が作成した日報を巡り16年7月、情報公開請求に「廃棄済み」と不開示を決定。翌年2月に見つかったとして公開したが、陸自が隠蔽(いんぺい)を主導していたことが分かり、稲田氏や事務次官らが引責辞任に追い込まれた。

 もはや「またか」では済まない。森友学園への国有地売却に関する財務省の決裁文書が改ざんされ、加計学園による獣医学部新設問題でも、菅義偉官房長官が「総理のご意向」などと記された文部科学省の文書を「怪文書」扱いした後、省内調査で、その存在が確認された。政府が民主主義の根幹である公文書管理や情報公開をないがしろにするさまは目に余る。

 国民への重大な裏切り行為といえよう。政府は昨年、公文書管理に関するガイドラインを見直したが、その程度では、とても追いつかない。公文書管理法に改ざんへの罰則規定を設けるなど、抜本的な改革に取り組むべきだ。

 陸自のイラク派遣は初の「戦地」派遣で、政府が「非戦闘地域」と説明した部隊の活動地域の実態が問題となった。日報には従来の公表資料にはない厳しい現地情勢が記されている可能性があり、防衛省が「不存在」とした経緯が焦点となろう。陸自が初めて存在を確認してから小野寺氏に報告されるまで2カ月半以上かかったことにも疑問の声が上がっている。

 小野寺氏は隠蔽の意図はなかったとするが、それをすんなりと受け入れられるか。財務省の決裁文書改ざんでは、8億円余りの値引きに絡む疑惑への関わりが注目された安倍晋三首相の昭恵夫人や複数の政治家についての記述が削除され、国会議員に開示された。行政を監視する役割を担う国会、ひいては国民を欺く前代未聞の不正行為だ。

 加計問題では獣医学部の早期開学を巡り、首相周辺からの圧力を記録した「総理のご意向」文書などが文科省から流出したが、政府は当初、まともに取り合おうとはしなかった。こうした文書の存在が省内調査で明らかになり、出さざるを得なくなると、今度は本来公開の対象となる行政文書ではなく「個人メモ」であることを強調した。

 旧社会保険庁の年金記録問題などずさんな文書管理が明らかになり09年、公文書作成・保存の統一ルールを定めた公文書管理法が成立。公文書は「民主主義の根幹を支える国民共有の知的財産」と位置付けられ、01年に施行された情報公開法とともに国民の知る権利を後押しするインフラとされた。

 しかし実態は懸け離れ、時の政権にとって不都合な事実が隠されたり、削除されたりしてきた。手を加えれば履歴が残る電子決裁システムの導入や、改ざんへの罰則規定の新設など、思い切った法改正に踏み出さなければ、国民の信頼は取り戻せないだろう。

2018年4月4日 無断転載禁止