女子ログ 古民家に住まう

 つい最近、温泉津に引っ越しした。大田市でもっとも西寄りの町である。中世の石見銀山に関わり栄えた古い港町。谷あいに湧き出た温泉は泉質の良さで知られ、静かな温泉街となっている。

 私はこの小さな町がかねてから好きだったので、「古民家ですが借りませんか」という話を知人から頂いて二つ返事で承知した。ちょうど身内の事情もあり夫婦の気分転換が必要な折でもあった。

 温泉街のほぼ真ん中という絶好のロケーションに位置するわが新居はよく整えられている。とはいえ100年近くも前に建てられた家だ。玄関から二つの客間が台所へと続くという典型的な“うなぎの寝床”で、来訪者がチャイムを鳴らしても私が出るまでに時間がかかるのには苦笑する。

 さらには階段が二つもあったり、ひょんなところに袋戸棚や押し入れがあるという、いささか不可思議な造り。そんな中に、頑丈な細木の格子戸、器や盃を散らしたモダンな柄の欄間など、大正から昭和にかけての建具が違和感なくおさまっている。思うに、幾世代もの家族や商売の変遷に合わせて改築を重ねてきたのだろう。そう思うと家の造作一つひとつが語りかけてくるようでいとおしい。現代の注文住宅にはない感覚だ。

 大切に住まうことで、私もこの古民家の歴史にささやかな一ページを書き加えたいと思う。

(大田市・ぽのじ)

2018年4月7日 無断転載禁止