ウサギかカメか

 カメ型よりもウサギ型の方が、時代に合った働き方なのだろうか。政府が進める「働き方改革」の焦点「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」からは、絵本や童謡でおなじみの「ウサギとカメ」が思い浮かぶ▼足の速いウサギと、歩みの鈍(のろ)いカメが競走し、最後はカメが勝つ筋書き。ウサギの敗因は、説明するまでもなく油断して昼寝したこと。油断しなければウサギが勝つのは当たり前で、寓話(ぐうわ)にならなかった▼明治時代には教科書にも載り、ウサギの立場から「油断大敵」の教訓を教えたという。その後、カメの立場から、コツコツと努力すれば、最後は結果が出るという教え方も加わったようだ▼カメの姿勢は、学校での勉強態度にとどまらず、そのまま勤勉で努力を重ねる、戦後長く続いた日本人の働き方と重なる。しかし高プロが導入されると、ウサギのように素早く仕事ができる特技や能力がある人は、結果さえ出せば、昼寝など時間の使い方の自由度は増す▼今のところ年収1075万円以上の、希望する金融ディーラーや研究開発職などが対象とされる。時間の長短や姿勢よりも成果で測る働き方への転換らしい。ただ対象範囲が先々広がる懸念や、残業規制が外れるため歯止めが利かなくなる、との反対も根強い▼一見「高給優遇」に見えるウサギ型は、不規則になりやすく心身への負担も増す。調子に乗って油断し、足を傷めると、歌のように「さっきの自慢はどうしたの」となるリスクが潜む。カメの方がしぶとく寿命は長い。(己)

2018年4月13日 無断転載禁止