平野勲さんの古里愛

 出雲市大津町にある小さな記念館がきょう15日閉館する。全国の祭りを描いた同市出身の画家・故平野勲さんの作品が並ぶ小さな画廊だ▼地元住民が2007年、平野さんが戦後に暮らした木造2階建ての古民家を改修して開いた。運営も住民が交代で担って、1千点に上る作品を管理してきた。小さな顔でも一つ一つに目鼻が入る温かみのある絵と調和する記念館の素朴なたたずまい。鑑賞者に安らぎの時間を提供した▼築90年を超える建物の老朽化は激しく、作品の管理や安全性は限界が来ていたという。閉館は身を切られるような決断だっただろう。記念館運営委員長の中村吉雄さん(77)は、開館前に青森県三沢市の平野さん宅を訪れた際、「思い出の場所で記念館を開いてくれるのは本当にうれしい」と喜ぶ平野さんの笑顔が忘れられない▼出雲への思いを常々口にしていた平野さんの入魂作が、出雲駅伝のスタートから各中継所、ゴールまで5620人の人々を描いた幅約12メートルの「出雲国神伝絵巻」だ▼平野さんが87歳で亡くなったのは、開館記念日と同じ10年の10月7日。出棺は10月10日午後1時で、その年の出雲駅伝のスタート時間だった。平野さんの郷土愛を示す逸話として語り継がれる▼画廊は閉じるが、うれしい知らせを聞いた。収蔵作品の一部が、市内の小中学校や幼稚園に飾られるという。人と人、地域のつながりが希薄になる中、祭りの絵を通じて平野さんが伝えたかった思いは今後、子どもたちのすぐそばで根を張る。(衣)

2018年4月15日 無断転載禁止