紙上講演 富士通総研経済研究所主席研究員 米山 秀隆氏

米山 秀隆氏
空き家対策とこれからのまちづくり

  官民一体のバンク制度を

 山陰中央新報社の石見政経懇話会、石西政経懇話会の定例会が17、18の両日、浜田市と益田市であり、富士通総研経済研究所の米山秀隆主席研究員(54)が「空き家対策とこれからのまちづくり」と題して講演した。全国各地で起こる空き家問題の根本的な原因を指摘し、行政や住民が講じるべき対策を提案した。要旨は次の通り。

 2013年の調査によると、空き家は全国で約820万戸ある。1990年代後半から地方で増え始め、今は場所を問わず問題となっている。増加の要因として、人口減少のほか、中古住宅が価値を持たないという日本特有の要因がある。

 日本では、新築住宅を買う人が圧倒的に多い。戦後、住宅が不足した名残で、住宅の建築が産業化したことから質が悪くなり、住宅の寿命も30年ほどと短い。かつては、取り壊すより住宅を残した方が敷地にかかる固定資産税が安くなる特例があり、空き家増加を招いた。

 売却や賃貸用でない空き家比率は全国平均で5・3%だが、島根は9・5%と全国で6番目に高い。空き家はシロアリやネズミの駆除、草刈りでコストがかかり、倒壊して通行人に被害を及ぼすリスクもある。

 行政は空き家を活用するため、空き家バンク制度を始めている。15年の調査では検討中も含めると、千もの自治体に空き家バンクの制度がある。ただ、多くが実質は機能していない。成功例を見ると、地元業者や住民と一体化して情報収集を進め、移住者の受け入れ対策を実施している。

 一部の地域では、企業が高齢者用住宅を用意し、高齢者が暮らしていた住宅に子育て世代の入居を促すという循環型の取り組みがある。

 戸建てだけでなく分譲マンションも建て替えができず、廃墟となる危機が迫る。現状では、所有者不明の空き家を公費投入して解体しており、納税者の公平性を欠く。除去費を事前徴収する仕組みを確立すべきだ。

2018年4月19日 無断転載禁止