カジノ法案閣議決定/まず依存症対策の論議を

 政府がカジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備法案を閣議決定した。これに先立つ与党協議で、全国のIR整備箇所数を最大3カ所と決定し、日本人客の入場料を6千円、入場回数を週3回で月10回までとするなど法案に盛り込む規制内容がまとめられた。しかし多くの国民が懸念するギャンブル依存症拡大への対策は遅れている。

 昨年12月に与野党がそれぞれ提出した依存症対策法案の審議は全く進んでいない。パチンコや競馬などで入場制限を制度化する個別の対策も示されているが、十分とはいえない。カジノ解禁で避けられないとみられる依存症拡大をいかに防ぐか。まずは腰を据えた議論が求められる。

 法案の規制はIRのあるシンガポールなどを手本にした。ただ日本の場合、既にパチンコのほか、競馬や競輪、ボートレースといった公営ギャンブルがあり、依存症の疑いがある人は320万人とも536万人ともいわれる。中でもパチンコ店は駅前や郊外にあふれ、ギャンブルにのめり込む入り口になりやすい。

 そこへ、カジノが入ってくる。依存症のリスクは海外の比ではない。カジノで負けても、パチンコや競馬で取り返せばいいと深みにはまりかねない。IR法案を通すために形ばかりの対策をいくら並べても、国民の懸念解消にはつながらないだろう。

 オーストラリアのゲーム機協会が、カジノのスロットマシンなど世界中でギャンブルに使われるゲーム機について2016年の設置状況をまとめた。法律上は賭博ではないが、景品を換金できる日本のパチンコ・パチスロも含まれ、世界のゲーム機の6割近い457万台余りが日本国内にあるという結果になった。

 世界1位で、2位米国のほぼ5倍。依存症が疑われる人の推計値は調査により異なるが、最も金をつぎ込んだのはパチンコ・パチスロという点は共通している。また依存症問題に取り組む団体の調査では、依存症患者の家族の約8割が借金を肩代わりしたことがある。

 依存症は家族を巻き込み、犯罪の引き金にもなる。16年に全国で摘発された刑法犯のうち、動機・原因がパチンコは1329件、競馬や競輪などは999件に上った。

 政府はIR法案に依存症対策としてカジノの入場制限や入場料徴収を盛り込んだが、6千円の入場料では効果が薄いというのが大方の見方だ。パチンコや公営ギャンブルでは、依存状態にある本人や家族の申し出に基づき入場を制限する制度を検討している。

 しかしカジノへの入場を制限されても、パチンコ店には入れるというのでは意味がない。問題のある人については、すべてのギャンブルでの入場回数や賭け金の額を一元的に把握し、制限を加える仕組みも必要だろう。

 気になるのは自民党の前のめりぶりだ。与党協議で自治体の誘致合戦や事業者の要望を背景にIRの整備箇所数を4、5カ所、入場料も5千円とするなど大幅な規制緩和を主張した。

 万全の依存症対策を整えてから、IR法案の審議に入るのが筋だ。さらに、そもそも依存症の人が増えるのを前提にして語られる成長戦略なるものが必要なのかも改めて議論してもらいたい。

2018年4月29日 無断転載禁止