世事抄録 昭和ノスタルジー

 来年5月1日、新天皇が即位し、新しい時代が始まる。平成もあと1年を切り、過ぎゆく時代を振り返る日々だ。

 ある日の深夜、ラジオからジェリー藤尾の「遠くへ行きたい」が流れてきた。昭和30年代、亡き母がよく口ずさんでいた。洗練されたメロディー、「知らない街をあるいてみたい」という歌詞。人生を模索中だった学生の自分も好きな曲だった。目を閉じ、聴き入る。浮かぶのは晩年の母の顔。歌とともに当時40代の面影をたぐる。終盤やっと、ふっくらとした笑顔をとらえることができた。

 生まれて44年を共にした昭和は、子供から青春時代を経て大人になり、就職、結婚、子育てとたくさんの節目があった。正直、楽しいことしか思い出さない。苦しいこともあったが、全てプラス思考で乗り切ってきたという自負がある。その時々に力になってくれた人たちは、故人になっても語りかけてくれる。あの時代の音楽を聴く時、瞑想(めいそう)の中にそれぞれの優しさが静かに思い出される。

 前の前の時代に追いやられても、自分を育んでくれた「昭和」に帰っては力をもらうことと思う。新時代には、後期高齢者に仲間入りだ。やがて「平成」を振り返り、語る時もくるだろう。今は、残りわずかな平成を惜しみつつ、静かに見送りたい。そして余生を送る最後の時代に、記憶と金が遠くに去らないことを願うのみである。

(浜田市・清造)

2018年5月3日 無断転載禁止