土地のたまもの「出西しょうが」

 出雲市斐川町出西の特産「出西しょうが」の種植えが始まった。出西は豊かな伏流水に恵まれ、斐伊川が運んだ砂が堆積する栽培の適地。他の土地では同じ物はできないというから土地のたまものだ▼日本ではショウガは奈良時代に栽培が始まったとされる。出西では文献上、400年前に栽培が盛んだったとされるが、歴史はさらに古そうだ。地元に神話が残る。久武神社の言い伝えは、出雲の地に天下ったスサノオが、携えてきた薑(はじかみ)(ショウガの古名)を病弱なイナタヒメに授けて出西の森にかくまい、オロチを退治。喜んだヒメの両親が栽培を勧めた▼加毛利神社の社伝は、日向国(宮崎県)のカモンノミコトが主神のお告げで出西に社を構えた際、高天原(たかまがはら)の薑を持参し、「ここは適地」と栽培を奨励したという。出西は奈良時代に出雲国出雲郡の郡家があったとされ、伝来のショウガが政策的に栽培されていたのではないか▼繊維が少なく、芳香な出西しょうがは「娘やるなら出西郷へ、生姜(しょうが)の香りで風邪引かぬ。婿をとるなら出西郷の、生姜育ちでがいな人」とうたわれ、もてはやされた▼因果関係は定かではないが、徳川11代将軍家斉はショウガを欠かさず、55人の子を授かったとの逸話が残る。評判の出西しょうがも味わったかもしれない▼生産者の話では、今季は芽立ちが良く、豊作が期待できるという。昨年、塊根をしょうゆとみりんに漬けて、生のままいただく調理法を教わり、上品な辛味のとりこになった。夏の収穫が待ち遠しい。(衣)

2018年5月15日 無断転載禁止