紙上講演 政治ジャーナリスト 伊藤 達美氏

安倍長期政権の行方

 官邸主導 自民内に不満

伊藤 達美氏
 山陰中央新報社の米子境港政経クラブの定例会が14日、米子市内であり、政治ジャーナリストの伊藤達美氏(66)が「安倍長期政権の行方」と題し講演した。安倍晋三首相は9月の自民党総裁選に3選出馬の意欲があるが、森友・加計学園問題をめぐる野党の追及が再燃し、自民党内ではトップダウンの政権運営に閉塞(へいそく)感が漂う状況をひもといた。要旨は次の通り。

 安倍首相を取り巻く状況は第1次安倍政権を投げ出した時に似ている。消費税の使途変更の信を問うとして解散した昨年10月の総選挙で政権側にとって森友・加計問題は解消済みだった。ところが公文書改ざん、財務次官セクハラ疑惑が出て、再燃した。野党の追及は、安倍首相が次の総裁選に出ないと言うまで終息しないだろう。

 自民党内も模様眺めだ。安倍首相を支えてきた国会議員が少しずつ距離を置いている。官邸主導の政権運営にも、もやもやした思いが募っている。もともと自民党は下から声を上げ議論するシステムがあったが、小泉純一郎元首相のように安倍首相がこのシステムを壊した。議論する前に「これは首相の意向」と言うと誰も文句を言わない。

 森友・加計問題でも、憲法改正でも、党内論議がうまくいっていない。戦力不保持を定めた憲法9条2項を残したまま、自衛隊の存在を書き加えるという安倍首相の論に対し、腹の中で「2項との矛盾を整理すべきだ」と考える人は多いが、多数意見にならない。

 安倍首相の言う「拉致被害者全員の救出」が実現すれば総裁選3選の可能性もあるが、なかなか難しい。第1次と合わせ7年の長期政権になり国会運営も答弁も粗くなった。周囲には「余力を残してやめたほうがいい」との声もある。

 安倍首相が総裁選に出ない場合、有力候補は石破茂元幹事長と岸田文雄政調会長。安倍首相の政策の何を引き継ぎ、何を改めるか、政権運営は官邸主導か、ボトムアップかといった点が焦点になる。2人とも政権運営の考え方は似ており、安倍首相の考え方とは違う。接戦になるような総裁選ではなく、どちらかに支持が集まり信任投票のような形になるのではないか。

2018年5月15日 無断転載禁止